今年の夏こそは、

旅行に行きたいと思っていました。

本州にいる両親にも、

かれこれ5年ぶり?に会いに行きたいと

思っていました。

でも、仕事も立て込み

また家族みんなの予定も合わず…


ほぼどこも行かず

夏が終わろうとしていますが、

そんな私を救ってくれたのが

宮本輝著

「ひとたびはポプラに臥す」。


吉本ばななさんが、

「輝先生、私と同じ時代を生きてくれて

ありがとう」

というようなことを言っていたけれど

私も、ばななさんと同感です。


「ひとたびはポプラに臥す」は

鳩摩羅什が旅したシルクロードを自分も旅したい

という輝さんの長年の夢が実現し、

その過酷な旅の最中での、人生について

生と死について、

宮本輝さんの思索が詰まったエッセイです。


恥ずかしながら私、

シルクロードに憧れて

大学では、シルクロードの大家がいるという

学部で歴史・哲学を専攻。

(でも3年になる時の専攻は、目移りしちゃって

西洋哲学に鞍替え!!)

でも、私が高校生の頃、

「敦煌」という映画があったはず。

敦煌遺跡とかガンダーラ遺跡とか

世間でも、いろいろと話題になってたような。

シルクロードや中央アジアへの憧れが

私の中では北海道にもつながっているのだけれど

それを書くと長くなりそうなので

また、今度にします。


中国の西安から、ペシャワールまで

鳩摩羅什と同じ道を旅し終わった時、

輝さんは何を思うのか。


それを知りたくて

1巻から6巻まで

ものすごいスピードで読み通しました。


輝さんの小説を読み終わった時

「えっ、ここで終わり?」

と思うことがよくあります。

今回も、少しそんな思いがありました。


でも小説の中の登場人物は

物語の最初より確実に成長していて

心の中で、何かがストンと落ちて

すっきりとして

前に進めているのです。


今回も、きっと

この旅は終わったけれど

人間は、「人生」という旅を

死ぬまで続ける「旅人」なのだと

私達に気づかせてくれたのだと思います。


読み終わった後に

私も、乾いた褐色の砂漠を旅し終えた、

そんな錯覚を覚えました。


輝さんが旅した時から 

もう20年以上経っていますが、

シルクロードは

どんな風に変わっているのでしょうか。


この夏、どこにも行けなかったけれど、

すごく濃密なシルクロード旅行の気分を

味わうことができました。

読書は、私を世界中の国々に、

はるか過去の時代にも

連れて行ってくれます。


現実にシルクロードを旅するのは

輝さんのリアルな文章からも

命がけだということがよくわかります。

私には、空想旅行くらいが

ちょうどいいのかも

知れません。

(輝先生、ごめんなさい!)