我が家の二階、西側の天井近くに、

明かりとりの小窓があります。


この小窓から月が、ちょうど、

よく見えます。


夜中、目覚めてトイレにでも行こうと

二階の廊下に出ると、

ドキッとするほど明るい時があります。

月が煌々と輝き、小窓から家の中を照らしているのです。


月は、ほんとうに好きです。

切なくなるほど好きです。


なぜ、こんなに月が好きになったのか。


学生時代、吹奏楽団で

オーボエを吹いていて、プロ奏者の先生にレッスンを受けていました。

先生は、

とても歴史あるオーケストラの首席奏者だったといいますが、

まったく気取ったところのない、気さくな「おじいちゃん」先生でした。


先生が、一番憧れる音色。

何度か聞いたのですが、その奏者の名前は忘れてしまいました。

でもその音色を、

こう譬えたのが忘れられない。

「青白く、そして満月ではなく、

細い、細い三日月。」


私の頭の中に、

音はしないけれど、

きっと、こんな音色なのだろうと、

不思議と明確に、

音色のイメージが浮かびました。


夜空に青白く浮かぶ新月直後の

おどそくほど細い三日月。

そこから、蜜のように滴り落ちる

美しい音色。


いつか、もっともっと

ぴったりとあてはまる表現がしたい。


私の、月への憧れは、

きっと、オーボエを教えてくれた先生が

ずっと追い求める音色と

重なり合っているように思えてなりません。


春も、夏も、秋も、冬も、

月に癒され、

オーボエに明け暮れた日々を

懐かしく思い出します。