「お宅のハウスにカラスが入ってたらしいよ」
そう、ばあちゃんに言われたのは、8月初めだったと思います。
我が家で野菜を作っているビニールハウスの入り口は、人が出入りできるガラスのサッシを取り付けています。
二枚のサッシの片側は、夏は開け放ち、下半分にはキツネやカラスが歩いて入れないように、ベニヤ板を立てかけています。
その入り口上半分の狭い空間から、まさかカラスは入れないだろうとみんなが思っていました。
それが。
二件隣の自宅の居間から、我が家のビニールハウスを眺めていたばあちゃんたちの話によると。
まず、カラスはすうっと飛んできて、立てかけてあるベニヤ板の上に止まり。
少しハウスの中をうかがった後、中へ降り、何か赤いものをくわえて飛び立って行ったそう。
赤いものは、おそらくミニトマト 。
まさかカラスがビニールハウスの中に入るとは!
カラスは実に、不気味なほど賢いのです。
口惜しいけれど。
ただちに次の日、夫はハウスの入り口全てを覆えるようにベニヤ板を立て、さらに太くて長い材木をベニヤのつっかえ棒に。
かなり厳重に仕上げてました。
でも、これだと入り口を閉め切るのと同じでしょ。
「何か、網でも探してみるかな」と
じいちゃん。
網戸でもつけてくれるのかしら、と思っていたら。
次の日。
カラスが入った部分に、見たことのないふんわりとしたネットのようなものがとりつけてあり、そのネットの裾には針金が入れてありました。
風が吹いても針金が重りになって、軽いネットもしっかり垂れ下がっています。
「あんな軽いものでも、下がっていればカラスは入って来れないよ」
じいちゃんが取り付けてくれたのです。
見たことのない素材だったので聞いてみたら、牧草ロールの外側に巻くネットらしい。
ばあちゃんの実家の牛屋さんが、もういらないからと、くれたものを使ったそう。
じいちゃんは物をすぐに捨てないで、何かに使えるかもと、とっておきます。
あんまり厳重にしたら人間入れないっしょ、と、じいちゃんが言う通り、夫がベニヤを立てていた時には、ハウスに入るのが超めんどうでした…
じいちゃんの知恵と、物を大切に役立てる心がけにあっぱれです。