天国へ届け 『パラノ天国』『ひとコマTV』『超人戯画』 風刺漫画の大家 小槻さとしさん死去 | 20世紀漫画少年記

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 2019年5月7日、漫画家の小槻さとし(本名、小槻 智司 )さんが肺炎のため亡くなられました。享年72歳でした。

 

 

 小槻さとしさんは1946年生まれ、京都府出身。高校卒業後、 薬品会社勤務、土木作業員、トラック運転手などを経てデザイン学校に入り、 1978年に「少年マガジン」でデビュー。主に新聞、スポーツ新聞、タブロイド紙、週刊誌などで4コマ・風刺漫画を中心に執筆活動をしていました。

 

 1990年、『パラノ天国』にて第36回 文藝春秋賞を受賞。

 

 1997年から毎日新聞夕刊にて「ひとコマTV」を連載。 同作品の連載は2019年2月23日まで続き、22年にも渡る長期連載となった。

 

 32歳という遅咲きのデビューながらも各誌で活躍したのはひとえに小槻さとしさんの「似顔絵」の才能を買われての事だと思われる。「パタリロ!」の魔夜峰央氏が自伝的エッセイ『スピリチュアル漫画家!』で「似顔絵というのは特殊技術で漫画が描けるからと言って似顔絵が描けるわけではない」と語っているように、漫画家と言っても必ずしも似顔絵が上手く描けるというものではなく、なおかつそれを面白く漫画にできる漫画家は希少な存在であり、そう言った意味で小槻さとしさんは漫画界においても稀有な才能の持ち主だった。

 

 また風刺漫画といえば今やテレビでコメンテーターとして有名なやくみつる氏もスポーツ紙や週刊誌など各紙で連載しているが、新聞の場合はスポーツ紙や週刊誌と比べてかなり規制が厳しく、あまり毒のある表現はできないので風刺漫画は難しいところがある。特にモデルのある似顔絵の場合、当人からクレームがつく可能性もあるのでより表現には厳しい面がある。そうした厳しい制限がある新聞連載を22年間やってきた小槻さとしさんはまさに風刺漫画の大家と言えるだろう。

 

 2018年3月に胃ガンが見つかり、同年5月に手術を受け、その後は自宅療養を続けながら同居する義理の娘らの手を借りながら2019年2月23日まで『ひとコマTV』の連載を続けていた。

 

 長期連載もさることながら、その責任感こそが小槻さとしさんが漫画界に残した功績なのかもしれない。

 

 ご冥福をお祈りいたします。