次の日

優「う・・・うーん・・・」

携帯の電話の音が聞こえる。

優「・・・・うるせ」

優が電話に出る。

優「はい」

医師「神門・・・優さんですか?」

優「そうだけど・・・あんた誰?」

医師「総合病院の医師です・・・落ち着いて聞いてください!!翔さんがたった今事故に遭い病院にいます!!一刻を争います!!早く来てください!!」

その声を聞いた瞬間、優は携帯を落とした。

病室の前

優が急いで病室に入る。

優「翔っ!!」

母親は泣いている、周りには病院の先生達がいた。

医師「・・・優さんですね、先ほどお電話させていただいた者です」

優「翔は・・・!?」

医師は首を横に振る。

医師「手を尽くしたのですが先ほど・・・・お亡くなりになりました」

予想だにしなかった言葉で優はうまく聞き取れなかったがはっきりと「死んだ」というイメージは伝わってきた。

優「・・・は?・・・え?何て?」

しかし優の心音は早くなる。

優「死んだ?何かの間違いだろ?いくら医師でもそんな事言って許されると思ってんの?」

『ウソだ、信じるな、分かってる・・・・分かってるけど・・・』

心音が激しくなる、冷静さがなくなってくる

『落ち着け!!静かにしろ!!・・・・・静かに・・・静かに・・・』

母「・・・優・・・翔は・・・」

母親がなきながら言うが、もう優にはその声が雑音にしか聞こえなかった。

優「いいから静かにしてくれよっ!!!」

優が慎重に、ゆっくり顔を触ると冷たく硬くなっていた。

優「・・・う、ウソだろ!?オレ昨日まで一緒にいたんだぞ!!こんなこと・・・・こんな事あるわけ」

優が一歩二歩と下がる、認めたくない現実。

医師「残念ですが、これが事実です」

しかしその言葉や母の泣き声、雰囲気に翔の死を確信するしかなかった

優「そんな・・・・翔、起きろよ翔!!起きろって翔!!」

優が翔をゆするが反応はない、それを見るのが耐えれなくなった母親は優を止めようとする。

母「やめてっ!優・・・・翔はもう・・・」

優「・・・そんな、だって・・・!!」

『言いたいことがたくさんあった。警察官目指してがんばれよって、パピコうまかったって、高校からの推薦おめでとうって、殴ってゴメンって、いつもありがとなって、まだまだいっぱい言いたい事があったのに・・・目の前にいるはずのお前は冷たくて硬くて、けれど側にいる気がして・・・・・』

優が涙を流す。

優「もう、何もかも遅いのかよっ・・・・・!!翔・・・ヤダよ・・こんな最期なんて・・・」

すると小さなタンスの上にぼろぼろのダンボールを見つけた。

優「コレは・・・・」

小さなタンスの上にあったダンボールは優のトロフィーや賞状などが入っていた。

母「翔ね、昨日の夜昔の家に行ってたらしいの、ずっとずっとそれ探しててね、それを持って来る途中に事故にあったらしいの・・・」

優「コレって母さんが昔の家に置いてたオレの賞とトロフィー・・・なんで・・・」

中を開けると一枚の手紙が入っていた。

優「手紙・・・?」

優がゆっくり折りたたんでいた手紙を開くと、こう書いてあった

『お兄ぃへ、昨日はお兄ぃの素直な気持ち聞けてよかったよ。お兄ぃはまだ一人ぼっちでホントは助けてやりたいんだけど、オレが力になれるかどうか分からないからコレをお兄ぃに渡します。お兄ぃにはずっと言えなかったけど、勉強もせずにテストの点数良かったり、部活で全国に行くだとか、オレにはない才能ばかり持っているお兄ぃを妬ましく思い、でも尊敬してました。そんなお兄ぃが今『夢』という課題にぶつかってるのを知ってオレの中のイメージが少し変わりました。お兄ぃは覚えてないだろうけど初めて陸上部で賞状を貰ったとき「オレの夢は陸上選手になる」と言ってたので今でもそうなのかと思っていました。でも、どうやらそれはオレの勘違いだったみたいです、けれど・・・』

『オレはお兄ぃの走っている姿がいつみてもかっこよかったなって思っています』

『どうかこの賞やトロフィーであの頃の心から笑ってた自分を思い出してください。そして・・・出来ることなら、また笑って走り出してください。がんばれ!お兄ぃの味方、翔より』

(そうだった、オレは陸上選手になりたかったんだ・・・・)

優が手紙をギュッと握る。

母「翔ね、最期まで優の事心配してたんだよ・・・ずっとずっと「オレはお兄ぃの味方だから死んじゃいけない」って・・・・翔・・・辛いのに苦しいのに最期まで優の味方だったんだよ?」

優は母の方を振り返らず手紙を見ながら母に尋ねた

優「・・・・・最期、アイツなんて言ってた?」。

母が泣きながら気力を振り絞って言う。

母「『もう一度お兄ぃに走ってもらいたかった』って!!」

その言葉に優は耐えられなくなり鼻水も涙もたらすが、それでも堪えようとする、この時一番翔が亡くなったことを実感した、そしてその瞬間決意し、翔の前に立った。

優「翔遅くなってゴメン・・・・・オレやっと夢見つけたよ」

優「オレは陸上選手になる、誰よりも走ってお前の好きだった姿何度でも見せてやる!!だから天国で見ててくれよ・・・それが」



『それがオレの夢なんだっ!!!』



優が涙を拭いて走り出す。

母「優!!」

病院から出て走る、もう鎧のように不の感情がまとわりつくことは無い、全てをなぎ払い全力で走る。

『涙は流さない。』

『泣く暇があるなら夢に向かって走れ、努力しろ。』

『オレに出来た生きる理由、夢・・・見つかったのなら前に進め』

『鼻水を流しながらでも涙を必死に堪え、見つかった夢のために一歩一歩噛み締めてしっかりと前に進む、悲しくなんか、ない!!』

決意を決めた優の顔は笑っていた。






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その日の夜、ブランコの上に主人公は乗っていた

優はボーっとしながら夜空を見上げ翔との会話を思い出していた。

『ヒーローに一番近い職業何かな?』

『オレは警察官だと思う、正義の名に懸けて国民を守る英雄、ヒーロー』

『この前月9で刑事ドラマやってたの覚えてる?』

『その主人公のセリフ「オレはヒーローになる」って口癖、単純だけどストレートでかっこよかったんだ、新米でおっちょっこちょいなんだけど被害者に積極的に声をかけ、やりすぎだろってくらいに犯罪者を追いつめる・・・・・・なんかスゲーカッコよかった』

『オレもあんな風になりたいって思ったんだ・・・・・『ヒーローになりたい』って思ったんだ』

『だからオレ、警察官になる!!それがオレの夢なんだ!!』

優が上を見上げる

『夢、か・・・・・』

『・・・・・・・オレには、ない』

すると、そこに翔が来た。

翔「お兄ぃ!!ここにいたのか・・・母さんが心配してたよ」

息切れしてる姿から必死に探してたのが分かる。

『コイツにはあって、オレにはない』

翔「さっ、帰ろう!」

翔が手を伸ばす。

『コイツはオレの上にいる、オレは必死に努力したのに・・・・・何でコイツだけ?』

自分との差にだんだんと怒りが出てきた。

優「・・・・・・・お前さえいなければ」

翔「お兄ぃ?」

優がブランコから立ち上がると、不気味にフラフラと歩き翔に近づく

優「・・・お前のせいだ」

怒りだけじゃない、不安、焦り、情けなさ、惨めさ、虚しさ、さらには今までの努力での苦労全てが一つの感情になる、殺したい・・・

翔「何言って・・・」

その瞬間思いっきり翔の顔を殴った。

翔「うぐっ!!」

優「オレは!!お前なんかよりもずっとずっと苦労してきたんだ!!」

全てをぶつけるように、もう一発殴った。

優「寝る暇も惜しんでずっとずっと勉強して!!部活も必死に取り組んだっ!!」

さらに殴る、翔の顔からは血が流れる。

優「倒れるくらい!!病気になるくらい!!ずっとずっと努力してきたんだ!!なのにっ!!!」

翔が血を流しながら倒れる。

優「何でお前ばっかりが報われてるんだよっ!!!何もしないでオレと点数一点差だったり!!高校から推薦きたり!!夢持ってたり!!何で!!何でお前ばっかりなんだよ!!オレの努力は・・・苦痛を味わってきた日々は一体どんな意味があったんだっ!!!」

言いたいこと、辛い思い、全てを八つ当たりのように翔にぶつけた。

優「お前のせいだ!!お前さえいなければこんなに辛くなかった!!苦しくなかった!!あの一位も嬉しさに感じれたのに・・・・」

すると自分の中から冷静な自分が生まれる。

『違うっ!!オレの努力が足りなかっただけだ!!』

心の中で分かっている、これが単なる八つ当たりなことを、しかしもう戻れない、行くところまで行く。

主人公「お前のせいだ・・・・!!」

思いを押し殺し殴るが、どんどん冷静になっていき恐怖で力が抜けていく。

『やめろ!!翔のせいじゃない!!』

それでも優は殴る、手には翔の血が付いている。

優「お前の・・・お前の・・・お前の・・・お前の・・・お前の・・・お前の・・・」

何回も殴り気がつけば手は血まみれで翔の顔は腫れ上がっていた。

『オレは・・・一体何がしたかったんだ?』

両手を見る、手は血だらけだ、その血を見て急に怖くなる、罪悪感、恐怖、不安が優を襲う。

『分かってた翔のせいじゃないことくらい、分かってた報われてないことないことくらい、わかってたこんな日々でもオレは前に進んでいるって嬉しさを感じてたことくらい・・・・』

『分かってたのに』

優「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』

優は血だらけの両手で顔を隠し、泣き出した。

優「ゴメン翔!!分かってたんだお前のせいじゃないって!!でもオレお前のせいにして・・・・そうでもしなきゃどうにかなっちまいそうだったんだ!!ゴメン!!ゴメン!!ゴメ・・・」

すると、そっと優の両手を優しく翔が握った。

優「・・・・・・・」

優の涙はその温かい手によって、自然と止まった。

翔「オレも・・・分かるよ」

翔がゆっくりと顔を上げる

翔「オレも何もしていなかったわけじゃないんだ、むしろ勉強だけなら引っ越してからずっとしてるよ・・・オレ、お兄ぃよりもバカで新しい学校の勉強についていけなくて必死に勉強したよ・・・・・でも全然テストの点上がらなくてさ、部屋見ただろ?あの穴・・・悔しくて壁殴って穴開けちゃった」

(・・・アレはその時の穴だったのか)

翔「それからもういいやって思って遊んでたらあのドラマが始まって、主人公のスゲー真っ直ぐなところにひ引かれちゃって・・・・・でもその主人公全然努力しても結果が出なくて同僚に「無駄な努力だろ」って言われて・・・・そしたら主人公なんて言ったと思う?」

翔「『無駄な努力なら無駄じゃない努力になるくらい努力すればいい』」

翔が涙を流す。

翔「オレもう感動しちゃってさぁ・・・ホントその通りだと思うよ、だから必死に、必死に努力していったら結果が出始めてすごく嬉しくて前よりもどんどんどんどん夢が近づいてきて・・・・・だからお兄ぃの今の苦しみは痛いほど分かる、でもな」

翔がゆっくり立ち上がり、痛みを堪え涙を流しながら言う。

翔「自分で自分を追い込んだら前には進まねぇぞ?」

『ああ・・・』

優の目に涙が見える。

翔「自分が楽しめない未来に『夢』なんかあるかよ」

『そうだ・・・翔の言う通りだ』

優の目から涙が流れた、寒い夜なのにその涙は温かかった。

翔「今日は帰りたくなかったら帰らなくていいよ、母さんにはオレが言っとくから」

翔が立ち上がり、笑うのさえ痛い顔で無理して笑い。

翔「ムリせず楽しくな!じゃ」

そう言って翔はフラフラの体で歩いていく、その姿に罪悪感があったが何か吹っ切れた感じがした。

(ああ、軽い・・・気持ちも体も軽くなった気分だ、体中の枷が外れていく感じ・・・)

『体には疲れがきているのに体中が軽く気持ちも安らいでいく。まるで今まで狂っていた歯車がゆっくりと噛み合ったかのような』

優がベンチに寝転び笑う

優「はは・・・・はははははは!!」

『そうだ、いくら努力してもそれが辛かったら、苦しかったら意味がない・・・自分で、自分が楽しめる未来に夢はあるんだ!!今からでも遅くない・・・人生を、楽しもう!!』

そう思い、その日優は寝た。

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三学期

母「ここにご飯置いとくわよ・・・」

母親がそっとお盆にのせたご飯を置く、部屋の中では優が薄暗い中でひっそりと勉強をする。

『1月の上旬、弟はもう常に学年一位になるくらい賢くなり、冬休みが終わりもう学校には遊んでいる同級生はいなかった。』

『夢を追って・・・辛く苦しい日々を送ってきたのはもう三ヶ月も前の話、ずっと考えてきたなぜオレは苦しんでいる?なぜ辛いんだ?なぜ夢を探している?考えた先に出た答え・・・全ての始まりは夢を語ったあの日から』

写真たての写真には兄弟の写真があった、しかしその写真には翔の顔が破ってあった

『もうオレはお兄ぃと一緒じゃないんだ』

『一緒じゃない?・・・オレはアイツの下なのか?ふざけるな!!例え夢なんかなくてもオレは・・・』


『オレは翔を超える!!』


『見せてやるよ・・・オレの本気を!!オレはお前よりも上だっ!!』

5教科実力テスト、結果発表日、学校

学校の掲示板にはテストの順位が貼ってあった、学校中の生徒達が驚いた

男子A「ウソだろ・・・」

女子A「ありえない・・・」

男子B「マジかよ・・・」

翔が驚きの様子で掲示板を見る、一位には主人公の名前が載ってある、翔は二位だ。

家、主人公は先生と電話で話していた

優「すみません先生、部活指導あるのに放課後に電話して・・・それで結果はどうだったんですか?」

心配な気持ちで結果を尋ねる。

木戸「一点差だけど翔を超えたよ」

優「ほ、ホントですか!?」

木戸「ああ、学年一位だ、おめでとう」

そして何回か会話のやり取りをして電話を切った、すると優は飛び跳ねて喜ぶ。

(やった!!勝ったんだ!!オレは翔に勝ったんだ!!それだけじゃない・・・オレが、オレが学年一位!!)

優が椅子にすわる。

優「・・・はぁ~・・・・勝った」

優が手を上に伸ばす。

(オレは翔を超えたんだ!!)

手をグッと握り、ガッツポーズをする。

優「しゃあー!!勝った勝った!!これで帰ってきたら翔の部屋で・・・」

優が妄想する

優がかっこつけて翔の部屋の椅子に座っている

優「よっ!翔、実力テスト2位、残念だったな!お前を超えたのは・・・この、オレ様だぜっ!!」

妄想終了

(てな、感じで言ったらさぞがっかりするだろうなぁアイツ!!なんせ夢のないヤツに負けるんだからな!!良しっ!!コレでいこう!!翔が帰ってくるまで後5分)

優ががノリノリで階段を上がっていく。

(早く帰ってこないかなぁ~!)

優が翔の部屋を開けると、中は優の部屋並に何もなかった。

優「・・・・・・アレ?」

(久々にアイツの部屋入ったけど、こんなにすっからかんだっけ?)

すると部屋の壁に浅い穴が何箇所かあった。

(何だこの穴?)

すると落ちていた紙袋を優は踏んだ、それに気づくとサッと足を挙げる

優「ヤベッ!何だ?この袋?」

紙袋の中に手を入れると参考書が出てきた。

(コレ?参考書か?何でこんなところに?)

机の上をみると、高校の勉強の本ばかりだった。

(こ、コレって高校の勉強内容じゃ・・・・まさか、アイツずっとこの勉強してたのか!?・・・オレは必死に勉強して努力してたのにアイツとの差は一点だけ・・・)

優が手をギュッと握る。

優「くそっ・・・」

(何が勝っただ・・・!!オレはアイツの足元にもいないんじゃねぇか!!何のために・・・何のためにここまでがんばって来たんだよ!!)

『オレはアイツを超えてねぇ!!』

その時翔が帰ってきて部屋に入る。

翔「アレ?お兄ぃ?何でオレの部屋に?」

翔の手にはパンフレットがあった。

優「翔・・・」

優がゆっくりと振り返ると、翔は笑顔で言う。

翔「ああ、そうだ、テスト一位おめでとう」

言って欲しかった言葉、けれど天地とも言えるほどの差がある相手に言われる言葉は屈辱のほかなかった、すると優は翔の持っているパンフレットに気づいた。

優「それ・・・前お前が持ってたやつだろ?何で貰ってきてるんだ?」

翔「あ?ああコレは・・・その・・・な、なくしちゃったんだよ、だから貰ってきたんだ」

優「ウソだ、その学校はお前が「行きたい行きたい」って言ってた所だろ?お前が無くすわけない」

翔「・・・あ・・いや・・」

翔が黙り込むと、その態度に優がキレた。

優「隠すなよっ!!」

翔「あ・・・うん、別にたいした事じゃないんだけど、怒らないでくれよ」

翔「今日推薦の結果を言いに向こうの先生がわざわざ来てくれて、それでオレ通ったって言われた・・・オレ入学が決まった」

優「・・・・・・・!!」

その瞬間今まで以上に実力差を感じた、悔しさでは歯軋りする。

優「そのときにコレ貰ったって、それだけの話だよ・・・ははは」

翔が差をごまかすように軽く笑う。

優「・・・何だよ」

翔「え?」

優「何なんだよっ!!!オレの方が努力したのに、オレの方が点数いいのに!!何で・・・何でお前ばっかりなんだよっ!!!くそっ!!」

翔「お兄ぃ!!」

優が全力で走っていった。

『何なんだよ・・・オレの努力は、苦しみは、辛さはには意味はなかったのか?オレは何のためにここまで生きてきたんだ?オレの夢は・・・オレは・・・一体何なんだ?』

気づけば優は翔と話した道を歩き、夢を語られた公園の前に来ていた。



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