『逆噴射家族』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『逆噴射家族』


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【出演】
小林克也、倍賞美津子、植木等、工藤夕貴、有薗芳記


【監督】
石井聰互




“ザ・クレイジー・ファミリー!”




新興住宅地に一台のトラックがやって来た。

今日は小林家の引越しの日である。

小心で生真面目、家族をこよなく愛する優しい父・小林勝国は、20年間のローンでようやく小さな庭付き一戸建て住宅を手に入れたのだ。


母の冴子は、天真爛漫で底抜けに明るい女性だが、観葉植物を我が子のように可愛がるヘンな癖がある。

東大を目指して浪人中の息子・正樹は、受験勉強がたたってか、いつも異様に眼をギラつかせ、明けても暮れても暗記に没頭している。

娘のエリカは、アイドルタレントを夢見て常に演技のマネゴトに熱中している女の子。


郊外で健康的かつ明るい家庭を築きあげるのが勝国の夢であり、新居の前に家族と共に立った時、彼の胸は充足感でいっぱいだった。


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翌日からイソイソと健康器具を買い込み、勝国は理想的な家族設計を実行に移して行く。

ある日、勝国の兄の家を追い出された祖父・寿国が舞い込んで来た。

頑健で愉快な寿国を最初は暖かく迎える家族だったが……あまりにも無遠慮で奔放な振る舞いに、次第に反感を覚えるようになり……。


また一人増えたことで狭い団地住いの悪夢が甦ってきた!

危惧した勝国は悩み抜いた末、この家に祖父の為の地下室を作る事を思いつき……スコップで、シャベルで、はたまた砕岩機まで買い込んで穴掘りに精を出し始める。

穴掘りも中盤にさしかかった頃、なんと白蟻が現れた。

「せっかく手に入れた新居を白蟻なんかにに食いつぶされてたまるものか!」

とり憑かれたように殺虫剤を撒き、灯油をぶっかける勝国。

悪戦苦闘の結果、ようやく白蟻を退治。

だが翌日、会社にいても白蟻の幻影が頭から離れない勝国は会社を飛び出して家に取って返す。

今や完全に狂気の眼差しで砕岩機を振り回し、水道管を突き破った!

家族の怒りが爆発し、くんずほぐれつの戦いが始まる。


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一軒家の中で激しい戦いが繰広げられ……遂に家屋が崩壊!


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こうして一家は、ガード下で吹きっさらしの生活を始めるのだった……。




団地生活から抜け出して、新興住宅地へ越して来た一家が、舞い込んで来た祖父によって歯車が狂い出す様子を描くバイオレンス・アクション・ホームドラマ。


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この家族は母も息子も娘も祖父もみんな精神を病んでいる。

それに耐えかねた父親は、とうとうぶちギレ、
「お前ら、みんなキ○ガイだ!」

しかし一番狂っていたのは父だった?!

「みんなで、これを飲んで死のう!さあ、飲め!」
と、白蟻駆除の液体をカップドバドバ注いで迫る!


小林家が狂気の世界へと陥っていく過程は、父親の権力とも言えるマイホーム絶対主義を痛烈に皮肉っている。


温厚な真面目人間だった勝国はストレスが爆発し、いきなり暴走し始める。
そこからは緩いホームドラマの雰囲気から一転、石井作品特有のパンクスピリットが幕を開け……阿鼻叫喚の世界、怒涛の展開に。

砕岩機を手にした勝国は、一心不乱に土を掘りまくる!

そんな彼の姿に呼応するかのように、家族全員が狂いだし(?)アブナイ連中に様変わり。


鍋の蓋をヘルメット代わりに被った妻は、包丁を研ぎ……大根をスパスパ切っては、その切れ味にニヤリッ。

息子は部屋に引きこもり、まるでお経のように暗記文を部屋中に書きなぐった末に金属バットを手にする。

娘は水着に着替え、サポーターを巻き、突如プロレスラーに変身し、ヒンズースクワットで気合いを入れまくる。

祖父は軍服を身にまとい、軍刀を振りかざし「突撃ーー!」

父はジェイソンばりにチェーンソーを振り回す。

こうして小林家の家庭内戦争が勃発!


殴る、蹴る、走る、逃げる、叫ぶ、燃える、流血する……自宅が戦場となったアナーキーな争いは、凄まじさを通り越してもはや笑うしかない。


果てしなく続いた戦いの後、家族はボロボロに……。

と母親が、
「ご飯の時間よ。みんなでご飯食べましょ」

普通に食卓を囲むも、その時に勝国はハタと気付く。

「家が悪いんだ。こんな家があるからだ。そうだ、ぶち壊してしまえばいいんだ。真っ白にしてゼロからやり直そう!」

その結果、崩れ落ちる家屋。


ラスト、河原のガード下でホームレス生活を始めた小林家は一家団欒で朝食をし……そこから会社へ、学校へと通っていく。

この哀愁たっぷりのオチは秀逸!



この手の作品にありがちな心理描写が要となるサイコホラーとしての見せ場になる常道を避け、石井監督の演出は内面の狂気描写ではなく、チェーンソーやプロレスの技、包丁、ゴルフクラブ、金属バットなどで家族が戦い合うというアクション映画としての姿勢を崩さない。

最終的に自らマイホームを破壊し、ゼロに戻ることで再生しようとする小林家の家族の表情が実に清々しく、不思議な爽快感を残してくれる。


エキセントリックでかなり変な映画だけれど、そこに流れているテーマは‘本当の家族のあり方’だ。



小林克也と植木等の壊れっぷりも凄いが、当時まだ中学生くらいの工藤夕貴の壊れっぷりも見もの。
亀甲縛り状態にさせられるわ、植木等に胸を揉まれるわ、はたまた大絶叫してプロレス技を繰り出すわと、体を張りまくっての熱演。



ちなみに製作に長谷川和彦、プロデューサーが高橋伴明と当時のディレカンのメンバーが名を連ねています。

大森一樹、相米慎二、高橋伴明、根岸吉太郎、池田敏春、井筒和幸、黒沢清、石井聰亙。

超豪華なメンツが揃っていたんですね~ディレカン。