
【出演】
スネオヘアー、ともさかりえ、本上まなみ、村井良大、ほっしゃん、草村礼子、小林薫
【監督・脚本】
加藤直輝
“坊主だって、悩みはある!悩めるお坊さんが、生きるヒントを教えてくれる”
浄念は、福島の小さな町の禅寺に身をおき、妻の多恵と5歳の息子・理有と静かに生活している。

かつてミュージシャンだった浄念は音楽への狂おしい思いからノイズが聞こえるようになり、ウツ病患者として入院した過去があり、仏の道に進んだのは亡き父親のすすめによるものだった。
禅僧となっても薬を飲みながら病気と向き合っている浄念は、なかなか思い通りの生活にはならない。
ある日、地元の高校から頼まれた進路指導講演会で大失敗をしてしまう。
「別に私は、あなたたちがどうなろうと関係ない……未来なんかないんです!」
訳の分からないことを口走ってしまい、教師、生徒らは混乱。
これに落ち込む浄念だったが、自分の中にまだ‘音楽’への執着が残っていることに気付く。
そして「この町でライブをやりたい」と強く思いはじめる。
「やっぱり音楽しかないのではないかと……」
寺の住職である玄宗は、浄念の良き理解者であり音楽についても賛成はしているが、この町でライブをすることには困惑を示してしまう。

多恵は浄念の体調も心配して大反対するが、浄念の思いは変わらない。
そして多恵のもうひとつの気掛かりは……
「あなた、ライブになると脱ぐでしょ?」
「脱がないよ……下は」
町中に玄宗の妻・麻子に作ってもらったポスターを貼ったり、会場を探したりと着々とライブ実現へ向け準備を進めている。

そんな時、協力的だった庸平が自殺をしてしまう。
ショックのあまり浄念は自分をコントロールできず、かつて自殺未遂を起こした海へと出かけていき……その海であらためて自分と向き合う。

波を被りながらギターをかき鳴らし……‘祈ることも、歌うことも同じことなのだ’と悟った浄念は、自分のすべてをそのまま受け入れようとする。
そんな浄念を見て、進路に迷いがあった庸平の息子・隆太も自分と向き合う決意を固める。
「坊さんに音楽なんて必要ない。罰あたりだ」
と怒るはつたちの反対もあって、せっかく決まったカラオケスナック‘こころ’でのライブは中止になってしまうが、玄宗の「念さんにはありがたいお坊さんが住んでいる」との一言で、ついに浄念は寺でのライブを成し遂げる!

観客の中には、その姿を笑い泣きしながら見つめる多恵の姿があった……。
音楽に向き合うことで懸命に生き抜こうとする僧侶と、彼を支えながらも不思議と彼に癒されていく周囲の人々を描いた人間ドラマ。

仏の道を志し、禅寺で奉仕の日々を送るウツの僧侶・浄念だが、彼の心中は穏やかではない。
妻も子供もおり、寺で任される仕事も増えてきたが、何事にも慣れない不器用な彼は、法事や説法すら思い通りにいかない日々。
そんな浄念の心にひっかかっている、なくてはならないもの……それは音楽!
「どうしてもライブをやりたい!」
しかし、妻は「もうやらないって約束したじゃない」と大反対。
「この町にそんなしゃれたとこなんてないでしょ」と住職も渋い顔。
檀家たちは「坊さんに音楽なんて必要ない」と怒りだす始末。
そんな彼を「歌いたくなったら、自分の思う通りに歌えばいい」
そう優しく励ましてくれた庸平の死をきっかけにして、浄念は歌うことが‘本当の自分’だと悟るのです。
物語にちりばめられているのは、‘自分’をまるごと受け入れて生きるための禅の教え。
簡単に言ってしまえば……元ロッカーで、現在はウツ病を煩うお坊さんが自分のあり方に悩みながらも、「もう一度ライブをやってみよう」とするという話ですが、クスリと笑えて、ホロリともさせられる温かい眼差しに満ちた作品でした。
ただ浄念は何が原因でウツ病になったのかの説明はされていないが、お坊さんになるために大好きな音楽の道を捨てざるを得なかった無念さが、徐々に彼の心を蝕んでいったと想像できる。
それまで眼だけが異常にギラギラしていて、その表情には覇気のカケラもなかったのに、ライブが出来ると決まった瞬間、一気に明るい表情に様変わりし、饒舌になっていくあたりからも明らか。
シンクロで撮影されたクライマックスのライブシーンは臨場感たっぷりで圧巻!
またエンディングで流れるスネオヘアー+ともさかりえによる「ハレルヤ」は泣けます!