『うさぎドロップ』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

ユナイテッドシネマ浦和にて『うさぎドロップ』を鑑賞。


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【出演】
松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、桐谷美玲、池脇千鶴、木村了、綾野剛、キタキマユ、岡本奈月、風吹ジュン、高畑淳子、秋野太作、斎藤洋介、木野花、根岸季衣、池田成志、中村梅雀


【監督】
SABU




“まわりを見渡せば、世界は愛で溢れてる……”




祖父が亡くなったことで久しぶりに訪れた実家で、27歳の独身&彼女なしのサラリーマンの河地ダイキチは、一人の不思議な6歳の少女と出会う。

その少女・鹿賀りんは……なんと祖父の隠し子だった!

「えー!じゃあ、俺の叔母さんってこと!?」


邪魔な‘お荷物扱い’されるりんを施設に入れようと言う親族たちの意見に反発したダイキチは、つい……
「俺ん家、来るか?」

瞬間、ダイキチのスーツの裾をしっかりと握りしめるりん。

ダイキチの父母はア然とし、妹のカズミや親戚らが止めるも、もう後には引けない!

こうして、りんをひとり暮らしの借家へと連れ帰り、不器用な男としっかり者の少女とのちょっとちぐはぐな共同生活がスタートするが……。

「あぁぁ、なんで俺、カッコつけてあんなこと言っちゃったんだろ」


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子育ての厳しい現実に後悔するが時すでに遅し!


「まずは保育園探しだ」

カズミの助言もあり、何とか探し当てるが……。


保育園初日。


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満員電車に揺られりんを預け、また満員電車に乗って急いで出勤。


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バリバリと仕事をこなした後、夜になって全力疾走で迎えに行き……と慌ただしいことこの上ない。


そんな日々が続き、疲れに疲れきってしまう二人。


そこで、ダイキチは一つの大きな決断をする!
それは残業のない課に異動することだった。


はれて(?)倉庫勤務になり、残業はなくなったものの、今度は‘おねしょ対策’に悩まされる羽目に。


それでも慣れないながらも一生懸命にりんを育てようとするダイキチに対し、徐々に心を開き始めるりん。


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やがて新しい保育園に入園したりんは、ユウキという男の子と友達になる。

そこでダイキチは、ユウキを迎えにきたシングルマザーの二谷ゆかりと出会う。

実は彼女……ダイキチの憧れの女性だった!


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ゆかりは夫に先立たれ、モデルの仕事をしながらユウキを育てていた。


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ダイキチの波乱続きの子育てはまだまだ始まったばかり。


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果たして二人の共同生活はどうなるのか?

そして、ダイキチとゆかりの恋の行方は?


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「どんなに小さな子供でもやがては成長して大人になって結婚して親になって……その子供もまた親になって……と繰り返されていくんだ。こうして見ると世の中は、お父さん、お母さんばかりだ」




ひょんなことから一緒に暮らすことになった6歳の少女と男の珍妙な共同生活を描き出すヒューマンドラマ。


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成り行きとはいえ突然、子育てに挑むことになったダイキチの思考は極めて真っ当でシンプル。
目の前に助けが必要な誰かがいれば見て見ぬふりなんてできないし、引き受けた以上は途中で投げ出したりはしない。

平凡で無欲なダイキチが、ひとつひとつトラブルを乗り越えるうちに、りんと共に生きる喜びに目覚めてゆく姿が清々しい。


ダイキチはとにかくよく走る。
りんを抱えて喘ぎながら走る。
りんとしっかりと手を繋いで走る。
りんを迎えに保育園まで息を切らせて走る。

主人公が‘走る’といえば、SABU監督作品の大きな特徴。

『弾丸ランナー』では全編まさに走りまくりだったし、『ポストマン・ブルース』では自転車で、『DRIVE』では車でと、主人公をとにかく走らせる!
(『幸福の鐘』では歩き通しでしたが、これも内面では突っ走っていた)


SABU監督の一連の作品に共通する主人公を常に走らせるというコミカルかつ疾走感ある独特の作風はそのままに、今作では決して力んだり気負ったりすることなく、ほのぼのとしたダイキチとりんの日常を爽やかに映し出します。


電車のシートで寄り添って爆睡、洋服やぬいぐるみを買いに行く、ゲーセンでUFOキャッチャーに熱中……等など、微笑ましいシーンの連続。

その中でも食事シーンが超よかった!

ご飯のおかわりをするりん。
「でも、もうオカズがないよ」
とダイキチ。

と、りんは麦茶が入ったコップで手を濡らすと……ご飯に塩をかけてちっちゃいおにぎりを一生懸命に握りはじめる。

そしてダイキチのお皿におすそ分け。

「ん!美味しい!」

デコボコで不格好だけれど、りんが丹精込めて握ったおにぎりはとても美味しそう!


それからこのシーンも印象的。

愛する人がまたいなくなってしまったらどうしよう……と不安に感じているりんが、
「ダイキチも死んじゃうの?」
「死なないよ……そりゃあ、いつかは死ぬけど、それはずっとずっと先」
「死んだじいちゃんはどこにいるの?」
「お墓……だけど、りんのここ(心の中)にもいる」
「ここに?」
「そう。そして、りんをずっと見守ってくれてるんだ」



クライマックスは、りんとユウキの保育園からの脱走!

突然いなくなった二人を必死に捜すダイキチやゆかりたち。

その時、二人はある大切な場所に向かっていたのです。
しかし道に迷ってしまい……すると、見るからに怪しいロン毛の若い男に声をかけられ、深い森の中へとついて行ってしまう!

二人はどうなってしまうのかとハラハラドキドキ。

ところがこの男の正体は意外な人物(?)だったことがラストで判明します。
(やられたーーそういうことか!)



松山ケンイチの‘イクメン’ぶりは観ていて微笑ましいものが……と同時に「頑張れ!」と応援したくなります。
悪戦苦闘しつつも、優しくりんを見守る姿が好感的。


香里奈のシングルマザー役もハマっていました。


それからダイキチの妹のカズミ役で登場の桐谷美玲。
幼稚園の先生なのに実は子供が大嫌いという設定で、憎々しげに「子供が!」と文句ばかり言っているのが可笑しい。

「なんで幼稚園の先生なのに子供が嫌いなんだよ?」
「看護師が家に帰っても、白衣の天使とは限らないでしょ。それと同じよ」

無愛想で現実的な女の子……でも、そんなカズミもいつしかりんに深い愛情を注ぐようになっていくのです。

カズミがりんにお遊戯の指導をして上げるシーンが凄くいい。


そして、何と言っても芦田愛菜が素晴らしい!
大人の役者陣を完全に食ってしまっている。

子役ってどうしてもわざとらしい演技になってしまいがちで、それが鼻につく場合も無きにしもあらずだけれど、芦田愛菜は自然すぎるくらい自然な演技なのでビックリした。(末恐ろしい7歳児だ)

それとちょっとした仕草や何気ない表情の出し方も抜群。
表情だけで複雑な感情を表現できてしまう子役……いや、子役と言うより、もうこれは立派な女優です。

でもって、愛くるしくて健気で~とにかくメチャメチャ可愛い!

子供が苦手な自分ですら、こんな子供だったら一緒に生活してもいいな~~と思わせられるほど(^^;



どちらかというとアナーキーなイメージが強いSABU監督が、こんなにほのぼのとしていて癒し感たっぷりの作品を撮るとは……意外でしたが、とても楽しめる映画でした!
大大大満足!!