『RAILWAYS』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』


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【出演】
中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、三浦貴大、奈良岡朋子、橋爪功、佐野史郎、宮崎美子、遠藤憲一、中本賢、甲本雅裕、渡辺哲、緒形幹太、石井正則、笑福亭松之助


【監督】
錦織良成




“家族とは?人生にとって本当に大切なものとは?”




ただ、がむしゃらに生きてきた。
しかし、気がつくと、家族はいつしか家族ではなくなっていた。
妻の気持ちも、娘の気持ちも分からない。自分の気持ちさえも……。
だから、私は決意した。自分らしさを取り戻し、私らしく生きるために。


大手家電メーカーの室長、筒井肇は、仕事に追われる日々を送っていた。

50歳を目前に取締役への昇進を告げられる中、課せられたのは工場整理という名のリストラ。その対象は同期入社の川平が工場長を務める工場だった。

合理化を説き、本社への異動を薦める肇に対し、川平は「俺がやりたい仕事は物作りだ」と譲らず、退職の道を選ぶ。

川平の‘やりたい仕事’という言葉は、肇の心に何かを残していった。


妻の由紀子は、長年の夢だったハーブショップを開店し多忙な毎日を送り、肇との距離は広がって会話もほとんどなくなっていた。

一方、就職活動中の娘・倖は、自分の夢が見つからず悶々とする毎日。

肇は、そんな倖に……
「一体この先、どうするつもりなんだ?」
と急かす言葉をかけ、さらに倖を苛立たせてしまうのだった。


ある日、故郷の島根で一人暮らしをしている母・絹代が倒れたという連絡が入る。

急いで田舎に帰ったものの、軽度の心筋梗塞だと聞き、翌日には東京へ戻る肇と由紀子。

仕事ばかりの両親に、倖は、
「婆ちゃんより大切な仕事なんて無い!」
と反発するが、肇は取り合わない。


そんな折、川平の交通事故死の知らせが飛び込んできて……。

さらに母に、悪性の腫瘍が見つかったことを医師から告げられ、肇はひどく動揺する。


呆然と帰った故郷で、家業のしじみ漁に励む同級生の了の誇らしげな姿や、都会とは違う田舎のゆっくりとした時間の流れを全身で感じる肇。

がらんとした実家で、かつて必死に集めていた電車の切符を見つける。母親が未だ大切にとってくれている切符を。

肇は子供の頃、一畑電車の運転士になるのが夢だったことを思い出す。

母親には親孝行さえしていない。妻や娘ともすれ違ってばかりいる。

「俺はこのまま、人生を終わらせてしまうのか。目前のことに追われ、やりたいことに挑戦さえしていない」


肇は会社を辞め、一畑電車の運転士採用試験を受けるという決意をする!

49歳、しかも大手企業に勤めるエリートだった肇の応募に、一畑電車の社長と部長は、ただ驚くばかり。
しかし、待遇、環境、あらゆる条件にも屈しない肇の熱意に動かされ採用を決定。


由紀子は、肇から何の相談もなかったことに、半ば諦めたように、
「やってみたらいいと思う」


こうして妻と娘を東京に残して、肇の運転士見習いの日々が始まった。


晴れて運転士試験に合格した肇は、先輩運転士のらの指導を受けながら、働き始める。


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古い車輌でスピードもゆっくり、駅間の距離も短く、一時間に一本の運行というローカル線の一畑電車。

肇は、様々な乗客とふれあいながら、前職では感じたことのない充実感を覚えるのだった。


一畑電車の新入社員にはもう一人、宮田大吾という青年がいたが、なぜか宮田は心を開こうとしない。


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ある時、宮田がプロ入りまで決まっていた元・甲子園球児のエースピッチャーで、故障で野球を諦めるしかなかったことを知った肇は、なぜ自分がこの歳で、運転士を目指そうと思ったかを話す。


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「今が自分の夢に向き合う最初で最後のチャンスだって思ったんだ。いくつになっても、努力さえし続ければ、叶う夢もあるんだよ」


介護士の献身的なケアもあり、絹代は入院生活やリハビリに慣れてきた。


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肇の転職を知った絹代は、そっけない態度を取りながらも、嬉しそうな息子の様子に思わず顔をほころばせる。

「どぎゃん親でも、子どもが嬉しそうにしとーのが、一番だわねえ」


夏休みに入った倖が島根に来て、絹代の介護を手伝うようになった。
楽しそうに働き、就職についても「焦ることない」と言う肇の変化に驚く倖。

仕事に打ち込む一畑電車の面々と出会い、倖もやがて自分の夢に向き合い始める。


一方、由紀子のハーブショップは軌道に乗り始めた。

東京と島根……それぞれの夢の舞台に距離を感じながら、夫婦の幸せとは一体何かを考え始める由紀子。

「私たちはこのままでよいのだろうか?」


そんなある日、絹代の病状が急変する。

勤務中の知らせに動揺した肇は、宮田に運転を代わってもらうが……宮田が乗客の乗降を手助けするため運転席を離れた隙に、子どもが誤って運転レバーを動かしてしまう!

そして、事態は思わぬ騒ぎに。

肇は宮田を庇い、辞表を提出。

「若い宮田の将来と比べれば、49歳の自分の夢なんて……」

会社を出た肇が目にしたもの……それは……。


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大人になっても、いつからでも、人は前に進むことができる……自分の人生にとって、本当に大切なことに気づいた主人公の生き方を描くハートフルストーリー。



夢に向かって奮起する肇を軸に、ハーブショップ経営という自分の夢を叶える一方で、夫とのすれ違いに悩む妻、何をやりたいのか分からず悩む大学生の娘、幾つになろうとも息子を温かく見守る母親、故障でプロ野球の選手になるという夢を諦めた同僚らの姿が綴られていきます。


島根を舞台に、そこに暮らす人々の温かさ、再び紡がれる家族の絆。
そして出雲の大自然を走るバタデンと美しい田園が、忘れかけていた日本の原風景を思い起こさせてくれる。


登場人物たちが、皆とても温かくて観ていて癒されます。


泣けてしまったシーンは……宮田を庇って辞表を提出した肇にバタデンの社長と部長が、
「本当にいいのか?夢だったんだろ!」
「夢は叶いました」

そして会社を去ろうとする肇の前に……常連の乗客たちが立ちはだかる。

「辞めないでくれよ、筒井さん!」

ここで社長が泣かせる台詞を!

「筒井君は辞めませんよ……いえ、辞めさせません。電車は運転士だけで走ってるんじゃない。みんなが係わって走らせるものなんです。だから、みんなで責任を取る!」



一流企業を辞めて電車の運転士に合格するまでの経緯は意外とあっさり描かれてはいますが、電車を走らせるようになってからのストーリー展開は、グイグイ引き付けられるものが!


こういう真面目な映画って、心が安らぎます。