
【出演】
菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、宇崎竜童、夏木マリ、本田博太郎、ムロツヨシ、山本浩司、江口洋介
【監督】
吉田大八
“いくつになっても、どんな恋でも、恋をしている人は美しい”
美しい空と海に囲まれた田舎町で起こった、すべての人の記憶に残る、ある恋の物語。
彼女の涙に秘められた、あまりにも切ない真実。
「ずっと好き」はどこにもないから、私は毎日、小さな嘘をつく……。

海辺の町にひっそりと佇む小さな美容室‘パーマネント野ばら’。
そこは、離婚をして一人娘のももを連れて出戻ったなおこと、その母まさ子が切り盛りしている町に一つのパーマ屋さん。

町の女(オバチャン)たちは日々ここへやってきては、退屈な日常に華を求めるように、少し大げさに、お互いさまの小さな嘘を交えながら、恋にまつわる悲喜こもごもの(主に下ネタ)お喋りをする。
「あの男のチンコは、よかったわ~」
「どの男のチンコや?」
「チンコはチンコやがな」
‘パーマネント野ばら’は、うまく行かない恋や愚痴を吐き出してすっきりする女たちの憩いの場なのだ。

‘野ばらさん’と地元の皆に慕われているまさ子は何度も再婚を繰り返してきた。

最後の夫のカズオとは別居中で、彼は外に作った女の家に入り浸っている。
機嫌の悪いまさ子を気遣い、義父のカズオのところへと向かうなおこ。
「お母ちゃんのところに戻ってきて」
しかし……
「男の人生は真夜中のスナックや。夜中の2時に、次のスナックにハシゴする男の気持ちがわかるか?男をここで終わりにするわけにいかんのや」
というムチャクチャな理屈で断られてしまう。
なおこの友人でフィリピンパブを経営しているみっちゃんは、店の女の子と平気で浮気し、金の無心ばかりする夫のヒサシに頭を悩ませている。

「今回の浮気には、愛があるやないろうか?」
不安と怒りが溜まったみっちゃんは、ラブホテルから出てきた浮気相手を車で轢き殺そうというとんでもない行動に出てしまう……が、浮気相手を庇った夫とともに重症を負ってしまう。
病院でも罵りあって大暴れし、結局は離婚してしまう二人だが、それでもまた金の面倒を見てしまうみっちゃん。
「どんな恋でもないよりましやき。好きな男がおらんなるゆうて、うちは我慢できんのよ」
みっちゃんと同じくなおこの友人のともちゃんは、男運が激しく悪く、ダメ男から散々な仕打ちを受けてきた。
「歴代の男をみんな憎んどる」
現在はギャンブルに溺れた挙げ句、行方不明となった旦那を心配している毎日。
そんなある日、なおこはまさ子とゴミ屋敷に暮らす老夫婦の髪を切りに行った帰りに……突然、山道から飛び出してきたともちゃんの旦那ユウジと遭遇。
廃人のような風貌のユウジから、なおこは
「金に換えるように……ゆうといて」
とスロットのコインを渡される。
しばらくして、発見されたユウジは帰らぬ人となっていた。

「人は二度死ぬがやと。人の心の中におらんようになったら、いよいよ最後やと。今度こそ、本当に死ぬ」
皆、そんな自分たちを涙目ながらも、明るく笑い飛ばしている。
一方、なおこは高校教師をしているカシマと恋をしている。
誰にも秘密でひっそりとした交際。

互いを優しく想いあいながら、高校の教室で、海で、旅館で……デートを重ねるふたり。
しかし、その恋にもある秘密が隠されていた……。

「わたしは、なんでこんなに淋しいが!?なんで淋しくて淋しくてたまらんが!?」
美しい空と海に囲まれた田舎町で起こった、すべての人の記憶に残る……不器用に生きることを優しく肯定してくれる切ない恋の物語。
昭和の雰囲気が残る田舎の美容室‘パーマネント野ばら’では、パンチパーマの(!)強烈な……50~60代後半の女性たちが、超お下劣な下ネタトークを連発!
「山羊のクソくらい、かたーーくパーマをあててや」
と全員、見事なパンチパーマ(笑)。
ひとりのオバチャンは、お目当ての年下のオッチャンとラブラブデートをし、最終的には強引にラブホに連れ込む!
いくつになっても‘恋とセックス’を忘れないその元気すぎる姿は、女性が根源的に持つ生命力を強く感じさせる!?
そんなパワフルな彼女たちに比べると、なおこやともちゃんはまだまだ青い?
みっちゃんは、夫の浮気相手を車で轢こうとまでする激イタい女。
イタカワイイと言うか恐ろしいと言うか……。
なおこと高校の生物教師であるカシマとの恋愛関係は、とてもいい雰囲気……でもどこか変な違和感がある。
その真実が最後に明かされた時、なおこの淋しさの本当の理由がわかるのです。
あまりにも切なくて哀しい真実。
‘大人の女性の恋心’を赤裸々に描き、深い愛情と悲しみを湛える女性たちが、自分に小さな嘘をつきながら懸命に生きる姿からは、女の逞しさ、したたかさ、純粋さ、大らかさ、優しさ、切なさ……など、様々な女の情が詰まっている。
人間の‘どうしようもなさ’や‘愛すべき可笑しさ’。
女たちの恋と、女同士の親子間に漂う繊細な愛情、人の弱さや痛さをもすべて包みこむ、田舎町特有の大きな友情までもが深みを持って綴られていて、情緒溢れる吉田監督の演出が素晴らしい。
菅野美穂が目だけで内面のあやふやさを表現した演技は秀逸。
それから小池栄子は、この作品でも主役を食うくらいの強烈なインパクトを残します。
助演で光る女優No.1!