
【出演】
蒼井優、平良進、南果歩、金井優太、斎藤歩、中村愛美、前田吟、比嘉愛未
【監督・脚本】
熊澤尚人
“「おかあ、いま、どこにいる?」……すりきれた手紙を抱きしめ、少女は大人になる”

美しい島、竹富島で、ひとりの娘と母が必死に手を握り合っていた。
娘の名は安里風希。
東京に旅立つのは母と、付き添いのオジイ。
島にひとり残る娘は涙をこらえ、いつまでも手を振り続けた。
風希の父は、ずっと前に愛用のカメラだけを残して死んだ。
それからは、島の郵便局長のオジイと母との3人で静かに暮らしていた。

そんなある日、母の東京行きが決まったのだ。
すぐに帰ってくると思っていた……が、帰ってきたのはオジイひとり。
いつまで経っても母は島に戻ろうとしなかった。
でも……毎年、誕生日には必ず、母からの温かい手紙が届いた。
‘風希ちゃん、誕生日おめでとう’
いつも、そう始まる母の手紙は、まるですぐそばに居て見つめているように、いつも風希を励まし、勇気づけた。
少女から大人へ……人がいちばん感受性にあふれる美しい季節を母からの手紙と過ごした風希。
宝物であるすりきれた手紙を抱きしめて、ある時は帰らない母に反発し、ある時は母の存在に疑問を抱きながらも、結果としてはいつも母の言葉に支えられながら、風希は大きくなっていった。
いつからか亡き父のカメラを手に少しずつ撮影の練習を続ける風希。
撮影助手は幼なじみのカイジだ。

14歳の誕生日には母親から、
‘20歳の誕生日になったら、ちゃんと全部説明する’
という手紙が届いた。

「写真の勉強をするために東京に出て行こう」
風希の胸に新しい想いが芽生え始める。

高校を卒業し、東京に旅立つ日がやってきた。
オジイの反対を押し切って東京行きを決心した風希の決意の奥には、母の手紙の消印でしか見たことのない‘渋谷’という文字の存在も大きかった。
忙しい東京の日常の中で、いつのまにか自分の誕生日さえ忘れてしまった風希。
そんな彼女の元に、カイジが母の手紙を持ってやってくる。
‘来年の20歳の誕生日の朝の10時に、井の頭公園の弁天橋に来て下さい’
そして……いよいよ20歳の誕生日がきた。
風希は母と会えるのだろうか……。

母から届く手紙を軸として、南の島の郵便局長である祖父とその孫、そして東京で暮らす母、三世代の絆と少女の成長を描くハートフルストーリー。

沖縄の竹富島を舞台に、離島した母と、母から毎年誕生日に送られてくる手紙を支えに生きる少女との絆と成長が沖縄の美しい風景をバックに綴られる。
母親からの最後の手紙を読んで全てを知った風希が、過去の手紙を改めて読み返し……その際にカットバックで挿入される数々のシーン。
母親の優しさ、娘に対する強い愛情がひしひしと伝わってきて、泣けに泣けます!
‘風希の中だけでは生きていたかった。あなたが大人になるまで生きて応援してあげること……それがお母さんのたったひとつの夢だから。
お母さんはもうすぐニライカナイへいきます。
でも、ずっと風希のことを見守っています……海の向こうのニライカナイからずっと……。
あなたを誰よりも愛するお母さんより’
13年間、母親のことを思い続け、また会う日を夢見ていた風希。
その風希に13年分の手紙をしたためてから、この世を去っていた母親。
その母親の意志を受け継いで、代わりに手紙を送っていたオジイ。
辛く悲しい結末だけれど、人の温かさに溢れた素晴らしい作品でした。
風希役の蒼井優がメチャメチャいい!
憂いを含んだ表情、凛とした佇まい、手紙を読みながら流す大粒の涙……どれもこれもが印象に残ります。