
【キャスト】
ジェームズ・フランコ、アンバー・タンブリン、ケイト・マーラ
【監督】
ダニー・ボイル
“生きて帰りたい。断崖に挟まれた一人の青年の、究極の決断!
あきらめるな、未来を笑え”
水曜日、彼は‘決断’した!
谷底で激しく求めた‘新たな人生’を生きるために……。

金曜の夜……アーロンは、ロッククライミングを楽しむため、ブルー・ジョン・キャニオンに向け、いつものように誰にも行き先を告げずに独りで出発する。
彼は、休日はクライマーとして人生を謳歌していた。

土曜日の朝、車からMTBを取り出し渓谷へ。

その途中、道に迷った二人の女性を秘密の場所へと案内する。
そこは岩と岩の隙間から下の泉へとダイブできる場所。
大胆なアーロンの行動力は彼女たちを魅了するのだった。
彼女たちとまた会う約束をして別れた後……アーロンに、思わぬ災難が降りかかる!

目的地のブルー・ジョンを目指し、狭い道を通っていたところ、岩が落下して右手が岩と壁の間に挟まれてしまったのである!
谷底で全く身動きが取れなくなり、大声で助けを呼ぶも周囲には誰も居なかった。
助けを求める叫び声は無人の荒野に虚しく呑み込まれるだけ。

アーロンひとりの力では岩はびくともせず、岩を削ろうにも持っていた万能ツールのナイフはまるで役に立たなかった。
持てる知恵と経験を総動員して岩を撤去しようとしても、まさに無駄な努力。
彼はボトル1本の水と僅かな食糧で食いつなぎ、その様子をビデオカメラに記録し始める。
「かなりヤバイことになっている」
時間だけが過ぎてゆき……やがて食料も尽き、最後の頼みの綱である水も底をついた。
やむ得ず貯めていた自分の尿をも飲んでしまう。
意を決して挟まった自分の右腕を切り離そうともするが、ナイフは皮膚を切ることすらできないくらい鈍いことがわかる。
「安物のナイフはダメだ……」
次にはナイフを腕に突き刺すが、骨を深く切れないこともわかる。
自分の命が死にゆくのを感じ始めると、ビデオ日記はますます狂っていった。
自分の家族、元恋人との思い出、事故前の二人のハイカーのことなどが夢に出てきて……。
死を目前にして初めて自分の人生と向き合うアーロン。
自分勝手に生き、決して心を開かなかった……両親にも、友達にも、恋人にも。
そして、これまでの人生のすべてがこの峡谷での孤独の状態に向かうように運命づけられていたのだ……と悟る。
「この岩は、俺を待っていたんだ……何千年も前から」
衰弱した身体を引き裂くように襲いかかる後悔、そして湧き上がる命への情熱。
‘生きたい!生き直したい!’
そして、生命の限界を超えた127時間後……遂に彼は、ある‘決断’をする。
それは究極の‘決断’であった……。

断崖に挟まれ、動けなくなった男の過酷な体験を描いた実話の映画化。
主人公のアーロンは、タフなヒーロー気取りで、人と深く交わらずに生きてきた、開放的な陽気さとクールな一面を併せ持つ冒険好きの青年。
だが、落石という一瞬の運命によって、人生で取りこぼして来た数々の小さな幸せに気付き、大切な人たちと繋がるために‘生き直したい’と強く願う。
生命の限界を迎えるまでの127時間、死の恐怖に直面し、絶望の底で体験する‘人生’。
そこから脱出して、何が何でも生きる道は、‘ひとつ’しか残っていなかった。
それにしても、まさに生き地獄!
全く身動きがとれず、横になるどころか座ることすらも出来ず、延々と立ったままの姿勢でいなければならない状態。
水も食料もなくなり、昼は暑くて夜は震えるくらい寒い気候。
いくら叫べど人など来ない場所。
遂には様々な幻覚が襲ってもくる。
そんな状況でも元カノを思いながら、はたまたビデオに収めた二人のハイカーの水着の映像を見ながら……動かせる左手で自慰行為をしてしまう姿は切ないものが。
最終的決断を下した後の描写は凄まじいの一言!
とても正視できない。
しかし目を逸らしても、衝撃的な‘ある音’がこれでもかと響き渡ります。
ダニー・ボイルの演出は見事!
全編、緊張感と恐怖に満ちていますが、観終わった後は不思議な清涼感が残り、ポジティブな気持ちにさせられ勇気を与えてくれる。
ラスト……アーロンが全身で歓喜する姿は、非常に清々しい。
何が何でも生きる!生きてやる!
決して諦めなかったアーロンの執念に拍手を贈りたい。
尚、エンドロールでは、現在のアーロン本人の幸せそうな表情が映し出されます。
彼は結婚し、子供もいて……今でもクライマーを続けているらしい。
もし自分がアーロンと同じような状況に追い込まれたとしたら……127時間なんて絶対に無理!
せいぜい持ちこたえても、この映画の上映時間くらいの……1時間30分が限界ですね(笑)。