『松ヶ根乱射事件』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『松ヶ根乱射事件』


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【出演】
新井浩文、山中崇、キムラ緑子、三浦友和、安藤玉恵、西尾まり、木村祐一、川越美和、中村義洋、康すおん、でんでん、烏丸せつこ、光石研


【監督・脚本】
山下敦弘




“人間の情けない本音が出てきちゃう”



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鈴木光太郎は、派出所に勤める警察官。


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家では、母、双子の兄の光、姉夫婦が畜産業を営んでいる。
父・豊道は家出中だ。


ある日の早朝、雪の降り積もった松ヶ根の道で女の死体が発見される。

光太郎は連絡を受け、現場へと急ぐ。

光は車庫にしゃがみ込み、何やら車のバンパーを気にしているようだ。


光太郎は検死に立ち合うが……
「生きてる。生きてます!」

女は仮死状態であることが判明し、翌朝ベッドの上で意識を取り戻す。

女の名前は池内みゆき。
アイスピックとジッポオイルを所持していたみゆきを刑事は怪しむが、ひき逃げされたらしい状況については何ひとつ語らず、彼女はただ……
「何で変な目で見るんですか!?アタシは被害者なんですよ!」
と逆上するだけ。


駅で刑事と別れたみゆきは、西岡佑二の待つ安宿で落ち合い、氷の張った湖へと向かう。
二人はアイスピックとジッポオイルを使い氷上に穴を開けようとするが、なかなか上手くいかない。


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一方、光太郎の家では、豊道が、近所の理容室の娘・春子を妊娠させてしまったことが判明していた。

「恥ずかしくて外を歩けない」

髪を掻きむしる母の横では、痴呆のはじまった祖父・豊男が冷蔵庫に淡々とガムテープをつめ込んでいる。


春子の母親である国吉泉は、
「あんた、やったの?まあ、できちゃったんだから、しょうがないわよね」

何とも無責任な言葉を豊道に浴びせるだけ。


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そんな折、家族にも無関心な光は町の食堂にいた。
向かいのテーブルに座っていたのは、みゆきと西岡。
みゆきと目が合う光。視線をはずさないみゆき。

彼女は、自分を車で跳ね飛ばしたのは光であると気付いてしまったのだ。

西岡は、それを機に光を激しく恐喝し始める。


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空き屋を手配させ、ホームセンターで道具を買わせると再び湖へ出向き、氷に穴をあけさせ、冷たい水の中へ光を落とす。

光が湖から引き上げたボストンバックからは、たくさんの金の延べ棒と‘生首’がひとつ転げ落ちた!


鈴木家の居間。
姉の陽子が怒鳴り声をあげている。
西岡に渡す金の工面をするため、光が会社のお金に手をつけていたことがバレてしまったのだ。


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さらに光太郎は、光が幼なじみに延べ棒を売りつけていることを知り、あて逃げ事件の真相と湖氷の下に隠されていた死体の存在を知ってしまう。


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「警察、行こう」
「ダメ。無理……コウちゃん、オレ、自分で頑張ることにする。今日までありがとな」

そう言葉を残し、みゆきと西岡のいる空き家へと向かうが……。


いつしか、鈴木家にも松ヶ根の町にも静けさが戻りつつあった。


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春子には赤ん坊が生まれ、豊道は祖父の死をきっかけに家に戻っていた。

大きな変化があったようで、実はそうでもないかと思うほど穏やかな日常。

光太郎は相変わらずネズミの退治に夢中で、光は牛舎の仕事をさぼっている。


松ヶ根の町に銃声が響いたのは、まさにそんな時だった……。

「すいません、もう大丈夫です……すいません」


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90年代初頭の田舎町を舞台に、双子の兄弟の葛藤と現代に通じる少しおかしな日本人像をユーモラスかつスリリングに描く人間ドラマ。



鈴木光太郎は事件らしい事件が起きない田舎町で警察官をしている。

光太郎の双子の兄・光は、家の畜産業を気まぐれに手伝っている。

父親・豊道はダラダラした生活と性格が災いしてなんとなく自宅に居辛くなり、家出中。

母は父を怒るでもなく放置したまま。

モテるために20万を迷わず出す幼馴染、頼まれればすぐに下着を脱いでしまう娘……この町にはどこにでもいるような、でもちょっとおかしな住民が住んでいる。

そんな町に、どうも訳アリなカップル・西岡佑二と池内みゆきが松ヶ根へやってくることがキッカケとなり……ひき逃げ、金塊、ゆすり、床屋の娘の妊娠……と、町のバランスは微妙に崩れ始めるのだ。


冒頭、誰にも踏み荒らされていない深雪に横たわる女の死体?

次のシーンでは、検死のためベッドに全裸で寝かされているその女の姿。(ボカシなしでヘアーまでくっきり映し出す)
ところが、女は死んでいなかった!

先の展開が楽しみになり、グイグイと引き込まれる導入部!


日本の典型的な田舎町を舞台に、ちょっと滑稽な人間たちの狂騒曲の幕が開く。



登場人物たちは、みんな平凡なようでいてどこかヘン。(頭のネジが1~2本緩んでいる?)

そして唯一、まともだと思われた(?)光太郎も徐々に精神が壊れていくのです。



光太郎役の新井浩文は、律儀な印象で親近感を感じさせると同時に、ふいに見せる不気味な視線が妙に怖い。

光を演じる山中崇は、自堕落ではあるがどこか憎めない人間を繊細さと複雑さを絡めて全身で表現。

ふたりの父親を演じた三浦友和は、謎めいたダメダメ男を生き生きと演じている。

木村祐一は、町に突如現われる男をコミカルに、リズミカルに演じきり、松ヶ根の町を笑いとスリルで徹底的にかき回す!



‘乱射事件’とは……それは最後の最後に明らかになる!