
【出演】
渡辺真起子、安藤サクラ、ARATA、蒼井そら、大森立嗣、石橋蓮司、山口美也子
【監督】
山崎裕
“体温なんて、いらない”

携帯を持たない。合コンにも行かない。他人には干渉しない。
決して浮き立つような毎日ではないけれど、静かで規則的な日常を送り、傷つくことを恐れて他人との繋がりを頑なに避けている……アパレル会社で事務の仕事をしている34歳の独身OL・ヒロコ。
そんな彼女には、誰にも言えない秘密があった。
家に帰ると、顔も手も足も無い“トルソ”と呼ばれる男性型の人形を、心と体の拠り所にしていたのだ。

一緒にお風呂に入り、夜はベッドで慰みの相手として……。

ところがある日、ヒロコとは正反対の性格を持つ自由奔放な腹違いの妹・ミナが家に押しかけてきた。

恋人・ジロウの暴力と浮気に愛想を尽かして別れてきたものの……「行くところがないから、しばらく住まわせて」とミナ。
「もとはと言えば、お姉ちゃんが悪いんだからね!あんな男を紹介したお姉ちゃんのせいだよ!なんであんな奴を紹介したんだよ!」

彼女はヒロコとは対照的に人の温もりが無くては生きられない性格。
この妹の存在により、彼女が守ってきた日常は揺らぎ始めてしまい……。

男性の体の形をした人形を恋人代わりに生きる地味で暗い独身女性と、人の温もりを求めて彷徨うように生きる明るくて屈託のない妹を通し、女性の心に潜む深い闇と再生を描く人間ドラマ。

異父姉妹である彼女たちがひと夏の共同生活を通して、時に罵り合いながらも、互いが抱える不安と苦悩を理解し、やがては諦めかけていた自分たちの人生を取り戻そうと再出発する姿。
誰もが抱える苦悩と人生の機微、そして性格の全く違う姉妹の複雑な心情が繊細なタッチで綴られていきます。
孤独を抱えながら生きる姿が生々しくも、どこか滑稽でもあり、温かい余韻が残る。
別れた男との間にできた子供を産む決心をし、田舎に帰っていくミナを渋谷駅まで見送りにくるヒロコ。
「やっぱり品川まで一緒に行くよ」
「ううん、ここでいい。それじゃ」
クライマックスである姉妹の別れをドラマチックにすることなく、サラっと描いているあたりが逆にリアルで寂しさが伝わってきます。
大切にしていた人形をカッターで切り刻んで決別し……それまで化粧っ気がゼロだったヒロコが鏡の前で念入りにメイクをして、合コンに向かう。
生身の男を拒否して生きてきた彼女が、新たなスタートを切ろうとする瞬間で、物語の幕は閉じます。
ヒロコは34歳になった今でも男性経験はなし。
バーで出会った行きずりの男とベッドを共にするものの、その男は酔った影響で途中で熟睡してしまい……結局は未遂に。
複雑な思いで熟睡する男を見つめるヒロコが切ない。
姉妹を演じた渡辺真起子と安藤サクラが好演。
失礼ながらどう見ても主演女優のイメージではない(?)地味な渡辺真起子が主演を張るというだけで興味津々!?
不思議な雰囲気を醸し出しつつ、ヌードを披露するなど体当たりの演技です。
そして安藤サクラは、コケティッシュな魅力が全開で、凄く可愛い。