
【出演】
加藤和樹、佐津川愛美、賀来賢人、北条隆博、柳澤貴彦、植原卓也、佐藤めぐみ、小西遼生、松田悟志、キムラ緑子、佐藤二朗
【監督】
佐々木詳太
“神様だけが、知っている。
廃校に偶然集まった12人。
25年前の大量殺人事件がその運命を一つに繋げる……”
荒れ果てた廃校の中を何かから追われるように若い男が走っている。
それを追い詰めている刑事・藤本。
ある教室に身を潜めた若い男は、背後に血まみれの女子高生が忍び寄っていることに全く気付かない。
一方、藤本は後輩の刑事・赤岩に呼び止められただけで、「ヒャハン!」と情けない声を。
「怖いんですか?お化け」
「当たり前だろ」
「額から血が出てますけど」
「え?あ……ホントだ。何でだろ?」
外に数台の車が乗り付け、廃校にぞろぞろと入っていく一団がいた。
それはかつての佐藤学園であるこの廃校をお化け屋敷‘Tower of Sugar’へと作り替えるためにやってきたホラープランナーのアツオとスタッフ、そしてお化け屋敷のポスター撮影をするために集まった制服に身を包んだアルバイトたちだった。
スタッフからしばらく待機するように言い渡されたキャストの中に‘混ざっていた’奈緒と俊は、暇つぶしのために、お化け屋敷へと改装中の校内を探険し始める……が二人とも、なぜか校内の風景に懐かしさを感じるのだった。
一人で校内を歩いて回っているアツオは、吸い寄せられるように入室した用務員室で古い写真立てを発見し驚愕!
そこに写っていたのは、自分にそっくりな顔をした白衣姿の男。
その瞬間、謎の青い光が体を直撃し、アツオはしばし気を失ってしまう。
遅れて到着したのは、このプロジェクトを企画した責任者の滝島典子。

連続殺人犯を追っていた藤本&赤岩と遭遇したり、同僚の朝倉に邪魔されながらも、意識の戻ったアツオと対面を果たす。
しかし、アツオの視界には死体や血まみれの幽霊がフラッシュバックして入り込むようになり……25年前の今日、8月12日の光景のなかにいつしか迷い込んでしまう。

実はこの日、日航機墜落事故が起こったその陰で、佐藤学園では理科教師の佐藤隆による大量殺人事件が発生していた。
普段は温厚で真面目な彼が、なぜそのような凶行に走ったのか?
それは、隆の祖先にあたる佐藤陸軍大佐によって殺され、復讐を果たすために悪魔に魂を売った西条勝の力に拠るものだった。
西条は隆の心を善と悪に分割し、悪の心を増幅させることで殺人鬼へと変貌させたのだ。
隆の善の心は青い光となって25年後のアツオに取り憑き、体を借りて西条と戦い、自分の心をひとつに戻そうと試みる。
ところが、西条の力によって今度は隆の悪の心がアツオに乗り移り、その凶器の刃は典子や朝倉、赤岩、藤本たちに襲いかかる!
いつの間にか、奈緒と俊の眼前にも25年前の8月12日の光景が広がっていた。
それは、夏休みの補習の日。
教師の並河から、
「あんたたち、早く帰んなさいよ!」
と声をかけられた二人は、暴走族からガラス扉を守るために木の板を打ち付ける用務員の誉田を見て、その行為に得体の知れない危機感を募らせる。
それもそのはず、その板を打ち付けたことによって佐藤学園は出口をふさがれた状態になり、校内に残っていた教師や生徒は次々と佐藤隆に惨殺されることになるのだから……。
奈緒と俊は並河や誉田と一緒に逃げるにつれ、次第に‘何か’を思い出していく。

奈緒と俊にいったい何が起きていたのか?
佐藤隆は西条との戦いに勝ち、自分の心をひとつに取り戻すことができるのか?
藤本と赤岩は連続殺人犯を捕まえる事ができるのか?
25年前に殺された人たちの魂は救済されるのか?
そして……この場所で、偶然に出会ったはずの12人が繋がっていく。
それは、やがて笑いと幸福感にあふれた意外な結末を迎えようとしていた……。
様々な思惑と背景を持った人たちが、廃墟となった空間で、25年の時を越えて混在する様を描く群衆劇。
ひとつの空間に2つの時間軸と人間関係、サスペンスやスリラー、ファンタジーといった世界観が綴られていく。
人気舞台の映画化で、恐怖と笑いが程よくミックスされている点がいい。
冒頭から「何かがおかしい?」という違和感が付き纏います。
幽霊がうろつく廃校も、ミスばかりしている刑事コンビも、用務員室の写真も、記憶が曖昧な高校生カップルも、何かに追われているように見える若い男も、どこかが微妙にヘン。
そこにいる人に対してあるはずのリアクションがなかったり、「何それ?」とツッコまれるはずのことがスルーされたり、視線を合わせてなかったり……。
この違和感には理由がある!
全編に張り巡らされた謎を解きほぐしながら観ていくと浮かび上がってくるものが……25年前の今日、この場所で起きた痛ましく凄惨な大量殺人事件。
今なお続く惨劇の記憶に巻き込まれたアツオは、廃校に集まった人たちに助けてもらいながら西条(悪魔)に立ち向かっていく。
観ている間、ある程度の予想はつくものの……それすらも裏切る大どんでん返しがラストに待っています。
その思いもよらない結末には、心地良い「やられた感」が!
冒頭から細かすぎるくらい細かい伏線が散らばっているので、初観では気付かなかった部分も改めて観直すと「なるほど~そういうことだったのか」と納得できます。
アツオ&隆役の加藤和樹は一人二役ではあるが、佐藤は西条の呪いによって心を善と悪に分けられ、しかもその善の心がアツオに乗り移り……と、演じ分けるキャラクターは実質的に3つ。
一瞬にして別人に変貌する様を見事に表現。
悪魔に魂を売った西条役の松田悟志のブチ切れた演技も見所。(『てっぱん』での好青年のイメージは全くなし)
そして‘裏主役’的存在といえる藤本刑事役の佐藤二朗が怪演。
すっ惚けた台詞、リアクションは大爆笑もの。
(『非女子図鑑』での刑事役に酷似したキャラ)
ラストにこの藤本の実態が明かされ……その『シックスセンス』もどきのオチには思わずニヤリッ。
尚、タイトルの『神様ヘルプ!』の由来は、殺人鬼となった佐藤隆が、死体を引きずりながら口ずさむチェッカーズの歌にちなんで命名。
(エンディング曲としても使用)