
【出演】
錦戸亮、ともさかりえ、今野浩喜、佐藤仁美、鈴木福、忽那汐里、堀部圭亮、中村有志、井上順
【脚本・監督】
中村義洋
“男らしくてやさしくて、礼節をわきまえた純情青年が江戸時代からやってきた。
パティシエ侍いざ見参!”
シングルマザーの遊佐ひろ子は、子育てと仕事を抱えてドタバタな日々。

一人息子の友也はやんちゃ盛りだし、上司や後輩はムカつくし、クライアントはワガママだし、ガス代は値上がりするし……。
「ああ、やだやだ!」
いつも通りの冴えない日常に四苦八苦していた時のこと。
スーパーの前に佇む奇妙な格好の男がいた。
「昔の人!」
「イベントか何かだね?スーパーの」
最初は気にもしなかったひろ子だったが……今度はマンションの前にも現れた。
着物にちょんまげ姿の木島安兵衛だ。
「あの……撮影か何かですか?」
「女!おぬし何者だ!」
「何者って……女ですけど」
「ここはどこだ!」
「巣鴨……」
「ここは全てが狂っておる。元に戻せ!」
「はあ?」
とりあえず部屋に招き入れると……。

「拙者は木島安兵衛。直参でござる」
「直参?木島さんは旗本みたいなもの?」
「そう、旗本だ」
「???」
なんと彼は、180年前の江戸時代からタイムスリップしてやってきた本物の侍だった!
「なぜ、どうやって現代の東京に!?」
しかし安兵衛自身もワケがわからず、帰る方法は思いつかない。
江戸から東京への激変ぶりにただ呆然とするばかりで行くあてがあるわけもなく、成り行きで遊佐家に居候することになる。
「ねえ、おじさんは幾つなの?」
「25でござる」
「若っ!」
「ママは?」
「…………」
「なに!33でござるか!」
「うっさいな……」
そして、
「今後、奥向きの用事一切、拙者がお引受け申す」
安兵衛は、遊佐家の家事すべてを引き受けると宣言する。
はじめは俳優か頭のおかしい男だと思ったひろ子。
しかし風呂上がりのザンバラ髪を見て、
「やっぱりカツラじゃなかったんだ……」
自分たちのために家事へ夢中になる安兵衛の姿に接し、徐々に心を改めていくひろ子。

ハンバーガー店で大騒ぎする友也を……
「いい加減にせい!」
と一喝。
礼儀や男らしさを教え、熱を出せば心を込めて看病をする。
現代の男にはない筋の通った骨太な男らしさ、それに加えて本物の強さに裏打ちされた優しさを持っていた。
ひろ子は安心して仕事に打ち込みはじめると同時に安兵衛の魅力にも惹かれていき……。
父親の不在に慣れていた友也も同じ。大人の男と一緒に暮らして守られたり、キチンと叱られたりする安心感を初めて知るのだった。
このまま3人で生きていくという選択もアリかも……それぞれが有り得ないような、はたまた当たり前のような未来を信じはじめた頃……。
安兵衛は初めて食べたプリンに感動。
「これは何とも美味……味わったことはござらん」
そのプリンをきっかけにお菓子作りにめざめた安兵衛は数々のスイーツ作りに熱中し、遂には‘お父さん手作りケーキコンテスト’に出場することに!
そして見事に優勝。
しかも、自由が丘に店を構える超一流スイーツ店からスカウトされ、そこに就職!
「拙者の願いは、きちんと働くことでござった。その願いがやっと叶ったのでござる」
めきめきと腕を上げ、彼はスイーツ作りの虜になっていく……が。
やがて、3人の間に築かれた微妙なバランスが崩れ始めてしまい……。
家族のような絆は永遠には続かないのか?

江戸時代からタイムスリップしてきた侍と一緒に暮らしはじめる母と息子子。
一見奇抜な設定のもたらす出会いが、予想を遥かに超えた奥行きを生み出すハートフル・ストーリー。
イロイロすれ違いはあったものの、これからは3人で生きていこう……そう決めた瞬間、安兵衛の身に異変が起きます。
「願いが叶ったから、元の世界に戻れということなのだろうか」
ひろ子と友也を残し、安兵衛はいずこへと姿を消してしまう。
「またいつか会おう……」
「ぷりんはどうするんだよー!ぷりんを作ってくれるって約束したじゃないかー!」
それから……母子は、安兵衛の生家があるらしい麻布に足を運びます。
そんな時、ふと入った老舗の和菓子屋で……。
「ん?‘江戸ぷりん’?」
「これは江戸時代から続くモノなんですよ。創始者はこの人です」
壁に掲げられた絵を見たひろ子は、
「えーーー!!」
その人こそ、木島安兵衛だった!
ひろ子と友也は、早速‘江戸ぷりん’を食べます。
それは、安兵衛が作ってくれた‘ぷりん’そのものの味!
「美味しいー!」
「安兵衛さん、約束を守ってくれたね!」
木島安兵衛を演じる錦戸亮。
現代の東京へ迷いこむ凛々しい侍という難役を見事に表現。
ひろ子役のともさかりえと、友也役の鈴木福も好演!
この凸凹な3人のやり取りは、とても微笑ましくて温かい雰囲気を醸し出しています。
笑えて泣ける最高のハートフルコメディでした!