『毎日かあさん』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某シネコンにて『毎日かあさん』を鑑賞。


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【出演】
小泉今日子、 永瀬正敏、矢部光祐、小西舞優、正司照枝、光石研、古田新太、大森南朋、田畑智子、鈴木砂羽、柴田理恵、北斗晶、安藤玉恵、遠山景織子、木下ほうか


【監督】
小林聖太郎



‘泣いてるヒマがあったら、笑おう’

‘涙も笑いも規格外。でも、これは本当にあった家族の物語’




私は漫画家です。絵で一家を養っています。普通の家族とは、ちょっと、違うかも?


「なぜ世界中の母親は、毎日毎日朝から怒鳴り散らすのだろう」


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今日もサイバラ家に、嵐のような朝がやってきた。
仕事場の机で、ヨダレを垂らして寝てしまったサイバラリエコを大声で起こす母トシエ。

息子のブンジは6歳になっても、まだオネショのクセが治らない。

「こ、このストーブ変なんだよ。当たってるとズボンがビショビショになっちゃうの」
「あら~それは大変ね~(そんなストーブがあるかっ!むかっ)」


「褒めて伸ばそう」と叱るのをガマンしているのに、逆にブンジから、
「褒めてばっかじゃダメなんじゃない?」
と生意気にもツッコまれ……
「あんたをけなしてたら、キリがないわっ!むかっ


やっとブンジと4歳の娘・フミを保育園に送り届けるが……そこは麦田さんが5人の息子たちを体育座りさせ点呼をしたり、子供たちが走り回ったりと正に戦場のような世界。


そんな保育園を後にして、ようやく忙しい朝は一段落……と、思う間もなく、お仕事開始。


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サイバラは、締め切りに追われる人気漫画家。

優秀なアシスタントの愛ちゃんと、夜遅くまで働いている。

仕事部屋に乱入してくる子供たちを追い出すのにも一苦労。

「お母さん~子供たちをお願い!」
「はいよ!ほら、あんたたち、おとなしくしてないとカラスに目ん玉くり抜かれて、脳みそもグチャグチャに食べられちゃうよ~~」
「ヒッ!」
「……何もそこまで言わんでも……」


ようやく仕事が終わると、子供たちを寝かせる時間だ。


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一日の終わりのひと時のお楽しみは、子供たちは絵本、母はお酒。
どちらも疎かにできないサイバラが、子供たちの布団の中でグラス片手に絵本を読み聞かせると、目まぐるしい一日も何とか無事に終わるのだった。


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「手を離すのを怖がっていたのは、私の方だった」


さて、夫のカモシダはどこにいるのかと言えば……病院に入院中。
元戦場カメラマンで、今はアルコール依存症と闘っている。

ある日、勝手に退院してきたカモシダは、作家になると宣言したものの、原稿も書かずにグダグダ。

「もう酒は飲まないから」
「その言葉、聞き飽きたわっ!むかっ


しかも入学したばかりの小学校をサボらせて、ブンジと一緒に魚釣りに行ってしまう始末。

「学校なんかサボっちまえ!」


「心配したじゃないのよ!メモぐらい置いてきなさいよ!むかっ


そして、料理をしている時の‘みりん’がきっかけで……またまた酒に手を伸ばしてしまい、ベロンベロンに酔っ払って帰宅のカモシダ。


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「お~い、お寿司買ってきたぞ~!」

ところが……
「あ!犬!」
「ワンちゃんだー!」
「あれ?お父さん、お寿司と間違えて子犬買ってきちゃった」
「お寿司と子犬、間違えるかー!!むかっ

こんな調子で何度も繰り返してきたお決まりのコースが始まった。
(血を吐いては入退院を繰り返しているのだった)


ある朝、編集者のシマダが泊まり込み、徹夜で仕事を終えたサイバラが目にしたのは、散らかったリビングに大の字に寝ているカモシダとブンジとフミ。

床にはオネショの形跡が。

「誰!?オネショしたの!」
「犬がしちゃったんじゃない?」
「子犬がこんなに大量のオシッコをするかー!!むかっ

怒りに怒るサイバラだが、そんな出来事も‘ママ友’たちに話して大笑いすれば、なんだかスッキリしてしまうから不思議。


ある時、将来の夢を聞かれたブンジは、
「夢は~~コンビニのアルバイトになりたい!」

‘息子よ、その夢は間違いなく叶うだろう……しかもごく近い将来’


一方、依存症のカモシダの心は日に日に混乱し、妄想もひどくなり、原稿も全く進まずで、荒れに荒れる毎日。


とうとうサイバラは彼に離婚届を渡す!

「ま、しょうがないか……全部、俺が悪いんだもんな」


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「もしキミが許してくれるのなら、また家族一緒に暮らしたい」


失ったものの大きさに気付いたカモシダは、完全隔離された病院に転院することを決意する。

海辺の病院に入院するカモシダを見送るために、海岸で久しぶりに再会した元家族。

「おかあさん、おとうさんのどこが好きだったの?」

ブンジの無邪気な質問に、友人のゴンゾに紹介されて、バンコクで初めてカモシダと会った時のことを思い出す。


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「自分と同じ匂い」がするカモシダと一緒にいるだけで楽しくて、ただただ大笑いしていた……。


「もしあんたがお酒をやめられたら、うちに置いてやってもいいよ」

元夫に精いっぱいの優しさを見せるサイバラだったが……
「絶対、無理だと思うけど」
と憎まれ口を忘れない。


時は流れ、子供たちも父親の不在に、寂しさを募らせる。

そんな時、ブンジの頭にハゲが出来ているのに気付き……
‘円形脱毛!?父親が不在で子供でもストレスが溜まるの?悪いことしちゃってるな……わたし’

申し訳ないという気持ちから、
「ブンジ、今夜は好きなモノ何でも食べていいよ!絵本もたくさん読んであげる!」
「やったー!」

そして心配なので、病院に連れていくと……
「ああ、これはただのジャリッパゲですね」
「……ジャリッパゲ?」

その夜、
「おかあさん、今日は○○が食べたい!絵本も読んで~」
「今日はピーマン炒め!絵本も読まん!」
「え~~~」

‘息子よ、これまでの日々は幻だったのだ。早く忘れろ’


「おとしゃんに会いたい」
とグズるフミを連れて、川に浮かべたビニールプールに乗って海へと漕ぎ出し、カモシダの病院へ流れ着こうと思いつくブンジ。

幸い警官に保護され事なきを得たが、ブンジを叱りながらもサイバラは子供たちの心の痛みをしっかりと受け止めるのだった。


そして、遂にその日がやってきた……カモシダが依存症を克服する日が!

元夫を家族として、再び夫を家族として、再び迎え入れるサイバラ。

「けんかやめたの?長いけんかだったね」
と喜ぶ子供たち。


が……今度はカモシダのガンが発覚。

ようやくしっかりと手をつないだ家族には、避けられない別れが待っていた……。


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すべてに本音でぶつかる‘かあさん’の生き方と、家族の普遍的な絆を優しい視点で映し出す人間ドラマ。



6歳の息子と4歳の娘を持つ漫画家のサイバラリエコ。
母は強くて優しくて、何があっても子供や夫を優先する……「そんな誰かが勝手に決めた理想の母親なんてやってられるか!」

予測不可能な言動に走る子供たちに振り回されながらも、悲しいことや辛いことは笑い飛ばし、毎日をたくましく過ごしていく‘かあさん’。


元戦場カメラマンで、現在はアルコール依存症と格闘中の夫カモシダは、何度も同じ失敗を繰り返し、遂に離婚を言い渡される。
彼は失った家族の大切さを痛いほど知り、懸命に治療を続けるが、その身体はガンというもうひとつの病に侵されていた。


「一度好きになった人を嫌いになるのは難しい」

もう長くはないと知りながらもカモシダを再び家族として受け入れる決意をするサイバラ。
そして家族4人の束の間の幸せな日々が、コミカルに、時には切なく描かれていきます。


一家を養うかあさんは、締め切りと子育てに追われても、夫が騒ぎを起こしても、ムリもガマンもせずにあくまで自然体。

涙も笑いに変えるかあさんの生き方は、勇気と元気を与えてくれます!

そして、超本音でぶつかりあう一風変わった家族の様々なエピソードに大爆笑した後、悲しい別れを乗り越えて絆を深めていく姿に……涙が止まらなくなる。
(エンドロールで映る家族の何枚ものモノクロ写真は、特に泣けます)



さすが元夫婦!
キョンキョンと永瀬正敏の演技を越えた(?)演技は、リアリティがあり見応え満点。


ところがこの二人を完全に食ってしまったのが、ブンジとフミ。

子役特有のわざとらしさが皆無の超自然な演技が秀逸!
マジで凄いです、この子役コンビ。



‘生きてればイロイロあるけど、人生は楽しい!’心からそう思える作品でした。



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