【出演】
原田芳雄、石橋蓮司、中川梨絵、松田優作、桃井かおり、粟津號、野呂圭介、田村亮、山谷初男、田中春男、平泉征、石井宣一
【監督】
黒木和雄
‘竜馬は孤独な長距離ランナー……ナリ’
時は慶応三年（1867年）十一月十三日。
竜馬は雨の中……密偵、刺客から身を隠すために近江屋の土蔵に身を隠す。
そこからそっと外を覗き見ると、隣家の娘・幡の姿に一目惚れし、思わず急接近。
‘竜馬は覗きが得意……ナリ’
‘竜馬はド近眼……ナリ’
しかし竜馬は、幡の許に通っている男が、新撰組隊士・富田三郎であることは全く知らなかった。
十一月十四日。
そんな中、久しぶりに弟の右太が幡の家に現れる。
「右太！さあ、上がりんんしゃい」
「誰じゃ！？ん？どこかで見たような顔しとるのう。そうじゃ！人斬り以蔵に似ちょる。あいつは人を斬るのが好きな男じゃった。牢屋で毒殺されてしまったがのう」
「…………」
竜馬は、‘ええじゃないか’に紛れ、刺客の目を誤魔化すために女物の着物を着て化粧をし、友人であり自分の命を狙う慎太郎に会うために出かける算段を……その後を追う右太。
しかし右太は、鐘や太鼓を鳴らす町民のお祭り騒ぎの中で竜馬に捕まってしまい、
「離せ、離せー！」
結局、そのまま二人は近江屋の妙のもとへ。
突如、現れた竜馬に慌てふためく慎太郎。
「落ち着けや！別に殺しに来た訳じゃないき」
慎太郎も竜馬を殺すつもりはないと言う。
その慎太郎は近江屋の奥で新撰組に監禁されていた。
‘ええじゃないか’に紛れ、川岸まで逃げる三人。
「お前がわしを狙い、お前もまた狙われちょる。どうなっちょるんじゃ、こりゃ？」
そこで慎太郎が小声で竜馬に、右太を薩摩藩邸で見たことがあると言う。
右太の正体は、竜馬を狙う薩摩藩士・中村半次郎配下の一人だった！
慎太郎は、こっそりと右太を襲おうとするが失敗、竜馬に止められる。
一方、幡は痴話喧嘩から富田を殺害してしまう。
十五日。
竜馬と慎太郎は、妙のことで揉め、竜馬が調達したはずのライフル5千丁の代わりに写真機が届く。
早速、写真撮影をするが……
‘じっと黙って十分間、待つのだぞ’
‘撮影は失敗した。従って現存するフィルムは……ない’
竜馬はライフルの調達、海援隊の再組織のために長崎に行く、薩長を叩く、奇襲すると宣言。
「奇襲戦法じゃ！薩長を叩き潰してやるき！」
ところが逆に慎太郎は薩長につくと言う。
最後の杯を酌み交わす二人は、逃げ出す機会を待つ。
右太は幡に一緒に逃げようという。
しかし、その右太は何者かに殺され……竜馬と慎太郎も、外で町民が‘ええじゃないか’と騒いでいる頃……隠れ家の中で暗殺される。
幡は竜馬と慎太郎を殺した人間を目撃たちの居場所を教え、‘ええじゃないか’の騒ぎに紛れ込むのだった……。
坂本竜馬暗殺までの三日間を追った異色時代劇。
覗きが得意でド近眼、革靴履きの竜馬像が斬新。
討幕派の内ゲバには当時の学生運動の状況を描写し、‘ええじゃないか’との対比により、竜馬の目指した革命の大衆性が測られている。
また無声時代劇の雰囲気を彷彿とさせる字幕を多用した演出もユニーク。
原田芳夫、石橋蓮司のアドリブ演技により、互いを殺したくても殺せない……竜馬と慎太郎の幼馴染み同士の友情が丁寧に描かれていきます。
若い寡黙な侍・右太役の松田優作も素晴らしい！（当時はまだ23～4歳くらい？）
竜馬を付け狙いながらも、いつしかその魅力に惹かれていく微妙な心理状況を見事に表現。
そして女郎・幡を演じた中川梨絵がメチャメチャいい！
この女優、全く知らなかったのですが……70年代に日活ロマンポルノで一世を風靡した人気女優だったらしい。
セクシーでコケティッシュで演技力も抜群……非常に魅力的でした！