『ジャージの二人』
【出演】
堺雅人、鮎川誠、水野美紀、田中あさみ、ダンカン、大楠道代
【監督・脚本】
中村義洋
ある夏の日……。
父・54(グラビアカメラマン)に誘われて、息子・32(無職)は、軽井沢の山里にある別荘にやってきた。
お互い日常生活に問題を抱えていて、ちょっと現実逃避のつもりの二人は、亡き祖母が集めていた古着のジャージを着て……のんびりと過ごそうと腹を決める。
とは言ってみても、息子は携帯電話の電波が気にり、唯一アンテナが立つ穴場の丘の上に何度も足を運び、父親はファミコンで麻雀ゲームに熱中。
こうして、いい歳をした大人二人の、ちょっとモラトリアムな夏休みが始まった。
何もしないスローライフな夏が……。
色鮮やかな小学校のジャージを着た姿に、思わずクスリと笑ってしまう妙な佇まい。
そして何とも滑稽な会話、ゆったりとした空気。
そんなユルユルな雰囲気が最大の魅力の癒し系脱力コメディ。
「仕事辞めて、毎日何してんの?」
「特に……」
「ふぅん」
父は息子の生活にはあまり関心がない?
「なんかこう……甘いもんある?」
「アルフォート買ってあるけど」
「もっとフワフワってしたのがいいなぁ」
「ジャイアントコーン的な?」
「どんなの?ジャイアントなんたらって」
「それは~」
こんな感じでお菓子について延々と会話をする……等など、どうでもいいようなシーンの連続。
そしてテレビの天気予報で「東京は35度を記録し……」と聞き、
「いま何度?」
「23度だね」
‘よしっ、勝った!’と二人は意味のないガッツポーズ(笑)。
そんなダラダラ親子の別荘を訪ねてくる人たち。
近くの別荘に住むちょっと謎めいたオバサン。(二人にとってキーパーソン的存在)
父親の友人。(携帯ばかり気にしている)
息子の妻。(浮気中。離婚間近?)
腹違いの妹。(デッキがないと聞き、レンタルビデオが観れないと憤慨)
いそいそとジャージを用意したのに誰も着てくれず、へこむ父親の姿が可笑しい。
帰り間際に父親が突然、
「あ、昔さ、この道でジョン・レノンとオノヨーコを見たよ」
「そういうことは早く言ってよ!知ってたら生活変わるじゃん!」
ラストに、ずっと引っかかっていたことが(どうでもいいこと)遂に判明します。
胸に‘和小’とプリントされているジャージ。
「これは‘なごみ小’じゃなくて、‘かのう小’だったのか!」
観終えた後に、あの超ダッサいジャージが……何故だか無性に着てみたくなります(笑)。
正月休み、何もせずにダラダラ~~としながら観るには最適の作品かと。
ちなみにこの親子の別荘の悪いところは……
一、部屋に虫が出ます
二、布団がジメッとしています
三、五衛門風呂です
四、トイレは汲み取り式です
五、携帯が通じません
いいところは……
一、涼しい
二、ジャージ貸します
……だそうです(笑)。
堺雅人は、いつも微笑んでいるような表情の癒し系キャラ(?)だけに、この作品の空気感にピッタリ
それから何と言ってもシナロケの鮎川さんが素晴らしい
独特のイントネーションでボソボソッと話す雰囲気が、たまりません。
しかもグリーンのジャージが怖いくらい似合いすぎ。
ステージでのスタイリッシュな鮎川さんとのギャップが……