
【出演】
石橋杏奈、北浦愛、福士誠治、吉高由里子、宮崎美子、田口トモロヲ、大森南朋、柄本明、中村麻美、森田直幸、柄本時生
【監督】
廣木隆一
交通事故の後遺症で松葉杖生活となったのがきっかけで、まわりに壁を作ってきた小学4年生の和泉恵美。
だが、なわとび大会の練習を通して難病を抱える由香と友だちになる。
それから5年……中学生になった二人は友情を深めるが、由香の病状は次第に悪化してゆき……。

重松清の同名小説の映画化で、10代の少女の繊細な感情を丁寧に描写。
かけがえのない絆で結ばれた少女二人の友情や、不安や迷いを抱えながら生きる若者たちを追った青春ドラマ。
二十歳になり養護施設でボランティアをしている絵美が、学生時代の由香との思い出を振り返る形で物語は進みます。
カメラが趣味の絵美が撮った写真を元に、いくつかのエピソードを繋げていく構成。
「由香ちゃん以外に友達はいなかったの?」
「いつもふたり……歩く早さが一緒だったから。あ、ちょっとだけの友達はいた。恭子ちゃんてコ」
その恭子が由香に、
「いつもふたりで淋しくない?友達ってさ、たくさんいた方が楽しいでしょ?」
「絵美ちゃんと一緒にたくさんいる方がいい」

そして今度は絵美に、
「由香ちゃんが入院しちゃって淋しくない?」
「別に」
「ずっと一緒にいたいっていうのが友達なんじゃないの?冷たいよ」
「そうかな……わたしと由香ちゃんはモコモコ雲なんだよ。白いモコモコ雲。雨を降らせたり、陽射しを遮ったり……そういう存在」
入院中の由香が絵美に問い掛ける言葉が切ない。
「わたし、大人になるまで生きられないかもしれない。それまでずっと一緒にいていい?わたし、途中でいなくなっちゃうかもしれないけど……思い出たくさん残って死んじゃうと嫌かもしれないけどいい?」
「いいよ。当たり前じゃん!」
そして……。
由香が寝ていた……今は抜け殻になったベッドに……由香の体温を感じとるかのように絵美が寝て、ふと天井を見ると……そこには絵美が贈った‘モコモコ雲’の絵が貼られてあった。
‘いつもこの絵を見ていてくれたんだ’
堪えきれずに号泣する絵美の姿が哀しい。
ラストは空に浮かぶモコモコ雲に向かって……
「元気だよ」

廣木監督は、露骨に泣かせようというのではなく、敢えて突き放した感じの演出に徹しています。
間延びした台詞、同じく間延びしたロングショットを多用することにより(アップのカットが極端に少ない)普通の日常の情景を、時はこうして流れていくのだという当たり前の時間を見事に描写。
事件らしい事は、後半の悲しい出来事くらい。しかし、それすらも日常の情景として描いています。
(でもそれが重松清の原作のイメージとぴったりハマっている)
地味で静かで淡々とした内容ですが、心に残る作品でした!
『時をかける少女』で、若き日の芳山和子を演じた石橋杏奈が主演。
しかも、あの柄本時生も出ています!
『時かけ』では顔を合わせることのなかった二人ですが、これではツーショットシーンもバッチリあり!
『てっぱん』の‘鉄にい’こと、森田直幸が絵美の弟役で、恭子役には吉高由里子。この二人も好演!
若手俳優陣の瑞々しい演技には好感が持てました。