『夕凪の街 桜の国』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『夕凪の街 桜の国』


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【出演】
田中麗奈、麻生久美子、藤村志保、伊崎充則、吉沢悠、堺正章、金井勇太、田山涼成、小池里奈、粟田麗、中越典子


【監督】
佐々部清




原爆投下から13年後の広島。

そこに暮らす平野皆実は、打越に愛を告白されるが、彼女は原爆で父と妹を失い、自分が生き残っているという事が深い心の傷になっていた。

そんな彼女の想いを打越は優しく包み込むも、やがて皆実に原爆症の症状が……。


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半世紀後。
今は東京で暮らす皆実の弟・旭は、家族に内緒で広島の旅に出る。

そんな父を心配する娘の石川七波は、ひょんなことから友人の利根東子と共に旭の後を尾けて広島へ向かう……。



過去と現在の二つの時代を背景に、二人の女性による二つの物語が描かれる。

『夕凪の街』の原爆症発症の不安を抱えながらも、自分が生き延びたことの負い目から愛に臆病にならざるを得ない皆実。

彼女の腕には生々しいケロイドが残り、「熱い、熱い」と苦しむ幼い妹に何もしてやれなかったことをずっと悔やみながら……原爆症のため26歳の短い生涯を閉じる。


『桜の国』では父の秘密、自分のルーツを知り、それを静かに受け入れる七波。

「皆実叔母さんは26で亡くなったんだね。わたしは、その歳より長く生きてる」


そこから浮かびあがるのは、平和の尊さ、生きることの喜び。

二人の女性を通して家族愛、兄弟愛、恋愛など様々な愛の形が紡がれて行く物語。


被爆者たちとそれに纏わる人たちの人間模様が、リアルに描かれています。


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皆実は被爆者としての運命を受け入れた時……
「原爆は落ちたんじゃない……落とされたの。わたしが死んだら、原爆を落とした人は……またひとり殺した……って思ってくれるのかな……」

悲劇は続いているのに、当事者たちはもうとっくにそのことを忘れているのではないか……決して忘れてほしくない……という思いから発した切ない言葉。


そして戦後から60年以上経っても、まだ悲劇は続いている。

原爆症で死んだ叔母のことを知った七波に父は、
「お前だけは幸せになってくれ。皆実叔母さんの分まで幸せに……」


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原爆で心と身体に深い傷を抱えながらも強く生きようとする皆実を演じた麻生久美子。

戦争のことなど何も知らなかった現代の女の子が数々の悲劇を知り、改めて平和について自問自答する……そんな七波を演じた田中麗奈。

二人の演技が素晴らしい。