『武士道シックスティーン』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『武士道シックスティーン』


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【出演】
成海璃子、北乃きい、石黒英雄、小木茂光、堀部圭亮、山下リオ、荒井萌、古村比呂、板尾創路


【監督】
古厩智之



‘十五歳’

磯山香織は、厳格な父のもとで剣道一筋に生きてきた中学チャンピオン。
しかし、とある大会で格下の西荻早苗にリズムを狂わされ、まさかの敗戦を喫してしまう。

「同じ歳の奴に初めて負けた……」


‘十六歳’


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半年後……お互いの顔を知らないまま、東松学園に入学した二人。

廊下で香織と遭遇した早苗は……
「なんか強そう」
「見かけ倒しじゃん?」
「でも竹刀袋、般若だよ!」

剣道部に入部した香織は、初日の稽古で圧倒的な実力を見せ付ける。

「スッゲー!般若だ!」

そして稽古で早苗と対峙した瞬間、香織は、
「見つけた」

ところが、その早苗はすっかり腰が引けており、ヘラヘラと逃げまどうばかり。

「早苗、結構健闘してるじゃん?」
「あいつ、逃げるのだけは上手いから」

早苗は、剣道が好きで自分が楽しむためだけに剣道を続けてきたという、香織とは性格も考え方も全く真逆な少女だった。

「お前を倒すためにこの学校に来た」
「え?わたし?」
「来て損した」


とにかく剣道のことしか頭にない香織は、休み時間も本を読みながらバーベルを上げ下げして鍛えるストイックさ。

遠巻きに眺める早苗たちは……
「ごわしょ?」
「五輪書だよ」
「侍だ!武蔵だ!リアル武蔵だ!」


部活の稽古で上級生をも叱責し、叩きのめしてしまう香織。

「お前らはだから勝てないんだよ!これは竹刀ではなく刀だ!お前らを絶対にインターハイに連れていく!」


相変わらず逃げ腰の早苗に、
「ヘラヘラしやがって、クッソッ……お前の本気を引き出してやる!」
「……け、結構です……」


遂には自宅の道場に引っ張っていき、マンツーマンのしごきを始める。


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自分とあまりにも違う香織に興味を抱くようになった早苗は、修行の一環と称して強引に街に遊びに連れ出す。

ケーキバイキングで大量のケーキを前に……
「お金、ないぞ」
「食べ放題だから大丈夫!ていうか、これ全部食べるのが決まりだから」
「そうなのか?義務か?」
「そ!義務!」
「じゃあ、仕方ないな」

父親から禁止されていた甘い物だが……誘惑には勝てずにむしゃぶりつく香織。

ゲーセンではエアホッケーで負け続け……。
「クッソー、もう一度!」

ショッピングでは無理矢理、可愛い靴を買わされ……。
「やっぱりこんなのは履けない!」
と靴を投げ捨て素足で闊歩。


インターハイ地区予選に向けて、香織は先鋒に、早苗は補欠に選ばれる……が、香織は納得がいかない。

「1年で補欠に選ばれるだけでも凄いことなんだよ」
「私に勝ったお前が補欠なんて許せねえ!」
「ね、どんどん強くなってって……最後には一番強くなったらどうすんの?」
「そん時は、やめる!」
「それって寂しくない?」
「うるせーよ!」
「寂しいよ、そんなの」


いよいよインターハイ予選。
東松学園は順調に勝ち進むも、試合の合間の香織は不満顔。
「なんだ!ウチのあのぬるい試合は!」

香織と早苗は口論になり、ふとしたはずみで香織は階段から転げ落ち、手首を捻挫してしまう。

準決勝は片手だけで勝利を……しかしあまりの激痛にこれ以上戦うことは不可能となり……。

「私の代わりは西荻でお願いします。こいつなら勝てます。ホントは強いんです、こいつ。すぐビビるけど強いんです!だからみんなからの後押しが必要なんです。お願いします!西荻に力を貸してやってください!」

代打出場の早苗が打った‘邪心のないメン’が見事に決まり、インターハイ出場が決定!

「いい試合だった。いいメンだった」
「手……ゴメンね」
「お前が喜ぶのが一番の薬だ。どうだった?勝ってみて」
「どうって……嬉しい!スゴく!わたしの剣道、好きになれそう」
「そうか……」


ところがその日を境に香織の心情に変化が起き始めた。

戦う理由を見失った香織は、怪我が完治しても稽古をさぼり、レギュラーからも外される。

「先鋒は西荻!」
「はい!……えっ!?」


早苗は香織に部に戻るよう説得するが……。

「あんなしょぼいチームでインターハイに勝てるか!戻る気はない」
「そんなこと言ってるから、友達ができないんだよ」
「そんなもの、いらねえ。お前らみたいなチャラチャラしたのと付き合ってなんからんねえ」
「だったら、いつまでも独りでいなよ!」
「お前の剣道こそ、独りよがりだよ。ただのチャンバラダンスだよ、あんなの!」
「……」
「一回勝ったからって何だよ!」
「でも勝ったもん」
「あんなのまぐれだよ」
「じゃあ、辞めたきゃ辞めればいいじゃん!磯山さんがいなくたって勝ってみせるから!」


香織は父親に、
「剣道を辞めます。何のためにやって勝つんですか?それが何になるんですか?わかんない、全然わかんないです」

悩む香織に兄は、
「あのコと稽古しているお前は楽しそうだった」
「……」


その夜、早苗は香織の家を訪れるも……部屋から出て来ない香織。
早苗はドア越しに、
「最近……全然、剣道楽しくなくって。一度勝っただけじゃダメなんだよね。でも、わたしやっぱり剣道好きなんだと思う。大好きなんだと思う。磯山さんとの稽古、辛かったけど楽しかったよ。また一緒に剣道しよう」
「……」
「何か言ってよ!」


そんなある日、早苗は別れた父親と再会。
事業に失敗して以来、行方をくらましていた父親でしたが……。

「母さんと復縁することになった。で、福岡に引っ越すからな」
「えー!福岡!?勝手すぎるよ、そんなの!わたし……仕事に負けてボロボロになったお父さんを見て、負けるのが怖くなったんだよ!逃げるようになっちゃったんだよ!」
「大事なのは、勝つか負けるかじゃない。‘好きか’という気持ちだ。負けたっていい」
「そんなの、わかってるよ!」
「好きなら頑張れ!絶対に諦めるな。以上!」
「……」


何かを吹っ切るように激しい稽古に打ち込む早苗……しかし心は晴れない。

意を決した早苗は、
「わたしに負けたら部に戻る!約束だからね」
と、香織に‘果たし状’を突き付ける。


決戦の日……巌流島を思わせる小高い丘で待つ早苗。

香織は……迷いながらも父の道場に足を踏み入れると……突然、父は剣道を押し付けていたことを謝罪し、
「後はお前が決めろ。お前の道だ」

香織は竹刀を手にし、
「決めてました!うんと小さい頃に」


そして早苗の待つ決戦の場へ!

「超遅刻!やっぱり武蔵だね……三本勝負!」

制服姿のまま向かい合う二人……と、いきなり香織のメンが炸裂!

「イッテー!凄いいいメンだった。安心した!二本目!」

今度は早苗の胴がバシッ!

「ヤベッ、イッテーー!……三本目!」

一進一退の攻防。

「お前、強くなったな」
「わたし、元々強いよ。知らなかった?見つけてくれてありがとう」
「どういたしまして」
「……わたし、引っ越すんだ……九州」
「……!……関係ねえ!剣道やってりゃ、また会える!」
「勝負!」
「勝負!」


そして……香織は剣道部に復帰し、インターハイへ。

先鋒の香織は勝利し、次鋒の早苗の番に。

「ビビってる」
「ビビってない」
「お前の剣道、負けてもいいぞ」
「やだ!勝ちたい!」
「じゃあ笑え!」

面の中で二人は笑顔を交わし……。

「いけーー!西荻!!」
「メーン!!」



‘十七歳’

試合会場で出場選手名簿をチェックする香織。

「西荻、西荻、にし……ないなあ?」
と、その脇を通り過ぎる早苗。
「……!!」
「今は~甲本なんですけど!」
「ややっこしいんだよ、オメー!」
「お~~ズバッときた!ナイスツッコミ!」
「早苗……」
「……?」
「負けたらぶっ殺す」
「決勝で」
「決勝で」


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女子高生が主人公ながら、‘超硬派’な青春映画でしたビックリマークビックリマーク

真剣過ぎるくらいに剣道に打ち込む香織と、ただ好きだから剣道をやっている早苗……なにもかもが両極端に違う二人の対比の描き方がとても面白い。


剣道シーンを実際に演じている成海璃子と北乃きい……見事な竹刀さばきで、丘の上での‘決闘’は、‘女子高生版・武蔵対小次郎’とも云える名シーン!

真っ直ぐで一本気な香織と早苗の姿は、凛としていて美しいビックリマーク


早苗の頭の匂いを嗅いだ姉が「くっせ~~」と閉口する描写には笑いました。
確かに……臭くなるあせるあせる



『灼熱のドッジボール』『この窓は君のもの』など傑作がある古厩監督ですが~~『武士道シックスティーン』は、大大大傑作ビックリマークビックリマークビックリマーク