映画『時をかける少女』完全再現《10》 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

部屋で倒れているあかり。

「(目覚めて)……???」


居間のテレビでは‘1974年3月に起きたバス転落事故’を振り返る番組が流れている。
コップを手に入ってきたあかりは、興味なさそうにテレビを消して……コップの水をゴクゴクと一気に飲み干す。




病室のベッドで眠り続けている和子。
その眼が徐々に開いて……。

和子「……!」

和子を優しく見下ろす深町の姿。

封筒からラベンダーを取り出し、和子の枕元へ。

和子「伝言、届いたのね……」
深町「ああ」
和子「……深町一夫として来てくれたんだ……」
深町「……」
和子「……」
深町「……ありがとう」
和子「……」
深町「君によく似てる」
和子「……」
深町「……」
和子「……」
深町「またいつか……未来で」

そっと和子の額に手を翳す。




病院の廊下ですれ違うあかりと深町。
記憶を消されているあかりは、深町のことなどわからない。




病室に入ってきたあかり、と……和子の眼が開いていることに気付き、
あかり「……は!?お母さん!?お母さん!お母さん!」

急いでインターホンに、
あかり「は、母が目覚めました!」

和子「……」
あかり「お母さん!わかる!?あかり!」
和子「あかり……」
あかり「……(安堵の笑い)」




病室の外で。
医師「念のためMRI検査をしますが、この状態でしたらもう大丈夫でしょう」
あかり「ありがとうございます!」




病室で。

和子「あかり」
あかり「ん?」
和子「何だかね……懐かしい匂いがするの」
あかり「懐かしい匂い?」
和子「うん」

あかり、鼻をクンクンと。

あかり「……ん?」

和子の枕元にあるラベンダーに気付いて手に取り、
あかり「……これ?」
和子「ラベンダーだわ」
あかり「誰が置いたんだろ?……(ラベンダーを鼻に近付け)でも、いい匂い……ほら(和子の鼻にも近付けて)ヘヘッ」

その時、微かにカチャッという音が。

あかり「ん?」

制服のポケットから謎のフィルムケース。

あかり「ん……?」




居間で、フィルムケースを見ているあかり。
表には『光の惑星』のタイトルシール。

そこに電話が。

あかり「はい、芳山です」
長谷川「長谷川ですが」
あかり「……!」
長谷川「あかりか?」
あかり「うん」
長谷川「お母さんは?」
あかり「意識が戻ったからもう大丈夫」
長谷川「……あ、そうか……」
あかり「うん」
長谷川「……」
あかり「……あ、あの……」
長谷川「うん?」
あかり「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」




公園のベンチのあかり。
そこに映写機を下げて、ひとりの中年男性が歩み寄ってくる。
長谷川である。

長谷川「元気か?」
あかり「……(頷く)」
長谷川「お前、8ミリなんか観んのか?」
あかり「……うん」
長谷川「監督は?」
あかり「……(首を傾げ横に振る)」
長谷川「タイトルは?」
あかり「……光の惑星」
長谷川「……!?」
あかり「……どうしたの?」
長谷川「……まぁ、よくあるタイトルか。古いダチと昔、撮った作品と同じタイトルなんだ」
あかり「……?(頷く)」
長谷川「……」
あかり「あ、じゃあ、映写機お借りします」
と重そうに映写機を持つ。

長谷川「ああ、持てるか?」
あかり「うん、大丈夫」
長谷川「そうか?」
あかり「友達と車で来てるから」
長谷川「あ、そうか」
あかり「……」
長谷川「……じゃ……」
あかり「じゃ……」

長谷川、背中を見せて歩き去っていく。

その背中を淋しく見つめて、
あかり「ありがとう!」

長谷川、ちょっとだけ振り返り、ぶっきらぼうに手を上げて応える。

ゆっくりその場を離れるあかり。




部屋にはあかり、本宮、親友の女の子。

本宮は8ミリ映写機をセッティング中。

親友「本宮、あんたそれホントにわかんの?」
本宮「大丈夫だよ。よしよしよしよし!」

あかり「消すよ」

あかりと親友、スクリーンの前に腰を下ろし。

本宮「はい、いくよ」
あかり「OK!」

‘カタカタカタ’懐かしい音を立てながら映写機が回り始める。
スクリーンに映し出される8ミリの粗い映像。

~タイトル『光の惑星』~

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本宮「お?」
親友「なに?これ」

あかり、スクリーンを一心に見つめる。


次々と流れるサイレントフィルム。

初めて観たはずなのに、どこか懐かしい映像。

陳腐なセット、役者の拙い演技……でも何故だかとても愛おしい映像。


‘未来都市を飛び交う未来の車’

‘その未来都市がグラグラと揺れる’

‘未来服を着た男と女が見つめ合う’

‘床に倒れ込む男と女’

‘壁に描かれる桜の絵’

~字幕~
‘最後の桜は描かないで’

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そして……並木道を歩く白いコートを着た女の子のバックショット。

その女の子の淋しげな後ろ姿は……ゆっくりと、ゆっくりと小さくなり……。

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~字幕~
‘監督 溝呂木涼太’


フィルムが終わる。

親友「なんだ、これ?全然、意味わかんない」

あかりの眼からは次々に涙が溢れ出て……。

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親友「……!?あかり?……なんで泣いてんの?」
あかり「……なんでだろ……わかんない……」

本宮、フィルムケースの中に収められていた一枚の紙切れに気付き、あかりに手渡す。

本宮「これ、中に入ってた」
あかり「……?」

あかり、静かにその紙を広げると……。

‘未来の桜を見る君へ’




桜が満開の並木道。
涼太との思い出が沢山詰まった並木道。

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あかり、桜を見て……。

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記憶は消えても涼太への想いは決して消えていない……あかり。

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笑顔で歩き出す……。

きらめく明日に出会うために……。

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