『野獣死すべし』 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

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松田優作主演の最高傑作(とボクは思っている)『野獣死すべし』を久々に観て、改めて優作の凄さを再認識!


この作品に於ける優作の完全に常軌を逸した狂気そのものの演技は、必見の価値有りかと!


特に夜行列車内で伊達(優作)が刑事の柏木(室田日出男)に拳銃を向けながら静かに語りかけるシーン…ここは何度観てもゾクゾクします!(このときの優作の眼、完全にイッちゃってます)


台詞を再現してみると…。


伊達「寝ますか。寝る前にお話ひとつ、してあげますよ。リップ・ヴァン・ウィンクルの話って知ってます?いい名前でしょ。リップ・ヴァン・ウィンクル。彼がね、山に狩りに行ったんですよ。山へ狩りに。そこでね、小人に会ったんです。何ていう名前の小人だったかは忘れましたけどねえ。ずいぶん昔の話だから。とにかくその小人に会って、ウィンクルはお酒をごちそうになったんですよ。そのお酒があまりにもおいしくて、どんどん酔ってしまったんです。そして、夢を見たんです。眠りに落ちて。夢を見たんです。寒いですか?寒いでしょ?その夢はね、どんな狩りでも許されるという、素晴らしい夢だったんです。ところがその夢がクライマックスに達した頃、惜しい事に、目が覚めてしまったんですよ。辺りを見渡すと、小人はもういなかった。森の様子も少し変わってた。ウィンクルは慌てて妻に会う為に、村へ戻ったんです。ところが、妻はとっくの昔に死んでたんです。村の様子も、全然変わってましてね。わかります?つまり、ウィンクルが一眠りしている間に、何十年もの
歳月が経っていたんです。おもしろいでしょ?」

柏木「・・・あんたには、はじめっから妻なんかいなかったじゃないか」

伊達「僕の話をしているわけではないでしょう。リップ・ヴァン・ウィンクルの話をしているんですよ」

柏木「リップ・ヴァン・ウィンクル・・・小人に、何ていう酒をもらったんだ。できれば、俺も飲んでみたいなあ」

伊達「覚えてます。ラム、コァントロ、それにレモンジュースを少々、シェイクするんです。わかりますか?」

柏木「X・・・Y・・・Z・・・」

伊達「そう、これで終わりって酒だ」

と、ここで拳銃の引き金を引く伊達。
しかしカチャリと音がしただけで弾は出ない。

恐怖におののく柏木。

「ハッハッハッ!あんた、ついてる」


因みに難解なラストシーンには様々な解釈があるようですが、ボクは‘伊達の狂気が生み出した幻影’…という風に捉えています。