「最初で最後の勝利」 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

ボクは小学生時代、地元の少年野球チームに所属していた。

チーム名は、‘○○(地域名)ジャガーズ’。
(因みに、4~6年生で人数は約20人。ボクは、6年生の時にやっとレギュラーの座を掴んだ)

そして、最大のライバルチームだったのが、隣の地区の‘スネークス’。
ボク達は、このチームとの対戦を‘巨人・阪神の伝統の一戦’に 準え、‘豹対蛇の伝統の一戦’と呼んでいた。

月一で行われていた‘ジャガーズ対スネークスの定期戦…しかしボク達はなかなか勝つことが出来ず、連戦連敗を繰り返すばかり…いつも試合後は奴らの喜ぶ姿を尻目に、監督からお説教を喰らうという惨めな状況が続いていた。

とにかくスネークスのエースが、なかなか打てなかったのだ。そいつのフォームが、当時の巨人のエース江川に似ていたので、僕達は勝手に‘エガワ君’とあだ名を付け、「またエガワ君が投げるのかな?」とビビっていた。

そして4番を打っていた奴も難敵だった。落合そっくりの構えから(本人は真似ていたらしい)強烈な打球をカッ飛ばす長距離砲。
勿論、僕達はそいつの事を‘オチアイ君’と呼び、恐れた。

ボクは1番サードで背番号は16。
レギュラーなので本来なら5番を付けるはずだったのだが、初めて付けた「16」に愛着を感じていて、敢えて変更せずそのまま押し通していた。

しかしこの背番号が、相手の恰好の標的になった。
「16番だぞ~補欠だからどうせ打てないぞ!」と、必ずヤジられる。

「うるせー、黙ってろ」カキーンとデカいのを打って、何とか鼻を明かしてやろうと思うのだが、なかなか結果は出ず、凡退、凡退…たまに、まぐれヒットが出る程度だった。

そしてボク達6年生が卒業を間近に控えた頃、最後の定期戦が行われた。

最後くらいは勝ちたい、何とか一矢を報いたい…嘗められたままでは終われない!
ボク達は一丸となって、試合に臨んだ。

相手の先発は当然、エガワ君、そして4番にはオチアイ君がドデーンと座っている。

いざ試合が始まると、我がチームのエース‘ヒロッチ’が頑張った!
いつもなら四球連発で早々と交代させられるのに、この日は踏ん張り6回まで失点2に抑えていた。

だが相変わらず打線は湿りがちで、相手のエラーで取ったラッキーな1点のみという体たらく。

そしていよいよ最終回、7回裏(試合は7回制)最後の攻撃。
得点は2ー1。僅か1点差…まだ可能性は十分ある。
と…奇跡が起きた!
四球、エラー、死球で、なんと無死満塁となったのだ!
これは、ひょっとしたらイケるかもしれない!
ベンチは一気に盛り上がり…が、エガワ君もさすがに粘る。スクイズ失敗の捕邪飛、三振で二死満塁…逆に追い詰められてしまう始末。

打者は8番の‘クロパン’。あまり期待出来そうもない…ボク達は半分諦めムードに。

すると再び奇跡が起きた!
エガワ君の投げた球がワンバウンドのワイルドピッチとなり、三塁ランナーが帰ってきて労せずして同点に!
ところが大喜びしたのも束の間、オーバーランした二塁ランナーが三本間に挟まれているではないか。

「バカ~何やってんだ!」
ところがところが、二度あることは三度あるで、三度奇跡が起きてしまった。
捕手が三塁に投げた球が暴投となり、レフトを転々…その間にランナーがホームインし、大どんでん返し~3ー2の逆転サヨナラ勝ち!

驚くことに無安打で2点も取ってしまった。

ショボイ勝ち方ではあるが、勝ちは勝ちだ!
ボク達は、狂喜乱舞の大騒ぎ。

そして数ヶ月…ボクは中学生となり、迷わず野球部に入部。
それまで敵対していたエガワ君、オチアイ君ともチームメイトになり一緒に練習に励んだ。

一年後…エガワ君、オチアイ君は2年生ながらレギュラーに昇格。
そしてボクは挫折し、野球部を辞めていた…。