「春になると…」 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

春になると、陽気に誘われて‘陽気’な人が出現する確率も高くなるのだろうか?

先日、営業の途中で一休みしようと思い、公園の喫煙コーナーで一服していた時のこと…そんな陽気な人が立て続けにオレの前に現れた。

まずはジャージ姿で杖を突いた中年男が近寄ってきて、笑顔で会釈をしてくる。
思わず、会釈を返すオレ。
知り合いだっけ?…な訳ないよな?

「いやあ、参ったよ、参った、参った」

いきなり、参った参った連発されても…何なんだ、この人。

「これ何だか分かる?これ」
と手にした杖をプラプラさせるジャージ男。

「……(誰がどこからどう見ても杖ですが)」

「事故しちゃったんだよ。交通事故。で、このザマ」
「はあ…」
どうリアクションしたらいいの?こういうとき。

「自転車に乗ってる時にさあ…」
ジャージ男はそれから延々と事故の経緯、入院から退院までの体験談を話し始めた。

オレは適当に相槌を打ちながらも、話を耳から素通りさせたのは言うまでもない。

「ちょっとこの杖持ってみて」
「?」
「いいから騙されたと思って持ってみて」
「?……(訳わからん)」
それでジャージ男の気が済むのならと、杖を受け取った。

「どう?持った感じ。分かるでしょ?ね?ね?」

「……(何が何だか、全く分かりません)」

「軽いでしょう?持ってないのと同じくらい軽いでしょ」

確かに軽いけど…で?。

「そうですね」
こう答えるしかない。

オレは杖をソッと返した。

「じゃ!」
ジャージ男は、それで満足したのか去って行ってくれた。

結局、何だったのよ?
まあ、とりあえずいなくなってくれてホッとした。
二本目の煙草を吸っていると、今度は、長袖のポロシャツにチノパンの中年男が笑顔で近寄ってきた。
こういう方達って必ず笑顔…そこがコワい。

「今日は暖かいね~」
「……(無視しとこ)」
「あの、悪いんですけど~煙草を」

あ、な~んだ。煙草の火を借りに来たのか。
ポケットからライターを取り出そうとすると…。

「煙草一本、貰えるかな?」

そっちかい!
「あ、いま吸ってるのが、最後なんで」
嘘。煙草はまだ沢山残っていた。

「そう?ホントに?そうかなぁ」

ポロシャツ男は、未練タラタラながらもどうにか引き下がってくれた…が、軽く舌打ちしたの、聞こえたぞ!

するとポロシャツ男は、次の獲物に目を付け向かって行く。
ふと見ると、ジャージ男が学生風の男に話し掛けている。

見回すと、‘陽気な方達予備軍’がまだ何人かいるような雰囲気が漂っている。

この公園に長居は無用だ。
これ以上、陽気な方達の餌食にはなりたくない。
オレは逃げ出すように、公園からさっさと退散した。