やつれきったナルオを前にした、俺とJちゃんは更に話を聞いた。
「それにしても、お前んとこのオフク…ママは、金持ちなんだな。百万もの大金をポーンと出すなんて」
Jちゃんも頷いている。
「全然、金持ちなんかじゃないよ。でも結婚資金だって言えば出すのは当然だろ」
「け、結婚?」
「そうだよ。だって百万払えば一緒に住んでくれるって言ったんだから~イコール結婚じゃん。つまりその百万は結婚資金と同じだろ」
目茶苦茶な論理だ。
その百万は、胡散臭い英会話教材に払ったものだろうが!
奴の論理感は、崩壊している。否、最初から奴の頭の中には、論理なんて言葉は存在すらしていないのかもしれない。
「それで、U子さんとはそれからどうなったんですか?」
Jちゃんが聞くと、奴はいきなり嗚咽を漏らし始めた。
「そ、それが…彼女行方不明なんだ」
「は?」
「全然、連絡がつかなくて…会社に電話したら、ここんとこずっと欠勤してるって」
それって、居留守使われてるだけじゃ。
「携帯は?自宅は?」
「彼女、携帯は持ってないし、自宅にも電話はないんだって」
イマドキ、そんな人がいる訳ないだろ。ホントにそんなこと信じてるのか?オメデタ過ぎる。
「これは変だよ!絶対変だよ!おかしすぎるよ。そう思わないか?!」
オッ!やっとまともな発言。なんだ~正常な考えも出来るんじゃん。さすがに、騙されていたと気付いたようだ。
俺とJちゃんは、大きく頷き、奴の言葉に同意した…が。
「彼女は、何者かに拉致されたんだ!間違いない」
「はあ~?」
そうキタか~しかし拉致って。サスペンス小説じゃないんだから。
正常な考えが出来ると思ってしまったこと、撤回!
「で、誰に拉致されたっていうの?」
馬鹿らしかったが、とりあえず聞いてみた。
「そんなの決まってるだろ!そんなこともわからないのか、君達は」
わかるわけねえだろ!
つうか、拉致なんてされてるはずがないだろ。
今頃は、新しいカモ捕まえて、また色目使ってるとこなんじゃないの?
「U子が誰に拉致されたかというと…」
ナルオの‘妄想暴走’は、もう誰にも止められない…「続く」。