学生は始業式がスタートしたところだろうが、ボクの忘れられない高校時代の始業式の思い出…。
新学年初日…全生徒が体育館に集まっての始業式。
新任の先生の紹介が行われた。壇上に並ぶ新任教師達…とその中の一人に皆の視線が集中した。嫌でも集中した。
なぜならその男は、志村けんにソックリだったから!
似ている、見れば見るほど似ている。志村けんを若干太らした感じだが、とにかく似ている。
その瞬間、周りから「志村けんに似てないか?」「志村だよ、志村」「ソックリじゃん」とヒソヒソ声が。
俺は堪えた。必死に堪えた…笑いを。このシチュエーションで笑ったらまずいよな~失礼だよな~俺は腿をつねって沸き上がってくる笑いを抑えた。
ふと周りを見ると、皆笑いを堪えているのがわかった。肩を震わせつつも堪えている奴もいる。
そして先生達までもが笑いを堪えている姿が目に入った。
一種異様な空気が体育館内に充満している。
皆の思いは一つ…「笑うな、笑っちゃだめだ」
これぞ正に、リアル「ガキの使い・笑ってはいけないスペシャル」状態。笑うに笑えない生き地獄。
すると俺の前にいた悪友が突然振り返りこう宣りやがった。
「志村、後ろ、後ろーって言ってみようか?」
バカ野郎!これ以上、俺の笑いの虫を刺激するな!ただでさえ敏感になってるというのに。
そいつの頭をおもいっきり引っ叩いてやった。
そんな中、粛粛と新任教師の自己紹介の挨拶が続く…と、ゲッ!ヤバい!とうとう次は志村の番だ!
俺は俯いて顔を見ないことにした。顔さえ見なければ大丈夫だ。
しかし、人の意思は弱いもの…怖いもの見たさ(?)に我慢出来ずに壇上に目を向けてしまった。
その先生がマイクの前に立ったところだ。
いきなり「東村山音頭」を歌い出しても違和感ゼロのルックス。ヒゲダンスをやりだしたら無意識に手拍子をし始めてしまうであろうルックス。
そんな彼が遂に言葉を発した。
「え~皆さんは私が志村けんに似ていると思っているでしょうが…」
と言ったそのとき、彼は信じられないことにいきなり「アイーン」のポーズをするではないか!
しかもご丁寧にも志村けんの声色を使って。
この人、完璧に確信犯だった。
その瞬間、体育館内は堰を切ったかのような大爆笑に包まれた。
それまで必死に堪えていた笑いをぶちまけるかの如く、大爆笑の渦&嵐。
「もう我慢しなくていいんだかんね。目一杯笑ってもいいんだかんね。無礼講ってやつだかんね」
生徒も先生もこれまでの鬱憤を晴らすかのように、笑った!
そのとき志村先生は心の中で「よし!掴みはOK!」とガッツポーズをしていたことであろう。
実際、その先生はとてもヒョウキンな人で、後に生徒からの人気は絶大となった。
あれから××年…今でも彼は、志村先生として生徒の人気者なのだろうか?!