「禁断の魔術」 東野圭吾 文藝春秋 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

高校の物理研究会で湯川の後輩にあたる古芝伸吾は、育ての親だった姉が亡くなって帝都大を中退し町工場で働いていた。

ある日、フリーライターが殺された。

彼は代議士の大賀を追っており、また大賀の担当の新聞記者が伸吾の姉だったことが判明する。

伸吾が失踪し、湯川は伸吾のある“企み”に気づくが…。

 

 

禁断の魔術 (文春文庫)

 

 

科学技術は使う人間によっては「禁断の魔術」となる。

 

湯川先生はそう言った。

 

彼の弟子である小芝伸吾は「科学技術は戦争によって発展してきたという面がある」と言うが、湯川先生はそれを認めた上で、

 

「要は使う人間の心次第だ」と諭した。

 

昔のガリレオシリーズでは、警察が持ち込む摩訶不思議な現象に対して科学技術で説明をつけるというのが湯川先生の役回りだったのだが、

 

最近(「容疑者Xの献身」以降?)の湯川先生はどちらかと言えば、実際に事件の渦中に飛び込んでいき直接解決に貢献するというパターンが多い。

 

それは湯川先生が無機質な学問(実際はそうでないとしても)よりも、

 

人間に興味を持つようになってきたという証左なのかもしれないが、

 

正直言って、ガリレオシリーズってそういう愉しさは求めてないんだけどなー。

 

人情物語のようなパターンがウケたのは、「容疑者Xの献身」が本当に良く出来たミステリで、そのトリックのとキャラクターが完璧に噛み合っていたからだ。

 

とってつけたような人間物語では「容疑者Xの献身」のようなヒットは望めない。

 

 

…まあ、とは言え、他の作品に比べたらガリレオシリーズはやっぱり安定した面白さがある。

 

ラストの湯川先生の決断には賛否両論あるだろうけれど、それでもやっぱり。

 

ガリレオシリーズはこれで終了なのかなと思わせる終わり方だけど……最近の東野作品の中では安心して読めるシリーズなので、続編を望む。