岡山・倉敷の美観地区、その外れに佇む古書店「蟲文庫」。
10坪にみたない店内には古本と一緒に苔や羊歯のグッズが並び、亀などの動植物がいて、時には音楽イベントが開かれる。
知識、予算なしからの開業奮闘記、人と本のつながりが生んだ思いも寄らない出来事、そして偏愛する苔の話まで。ユニークな古書店の店主が、帳場から見た日常を綴る。
店主は就職先が合わず、ハタチで会社を辞められたそうです。
そして、辞めたその日にはもう「古本屋をやろう」と決めていたとのこと。
言葉は悪いけれども、
ハタチの小娘が資金もノウハウもツテも何も無く、
ただ本が好きなだけで古本屋を開業するという。
地価の高い東京などではなく倉敷という部分は唯一好条件だとしても、
それがどれだけ無謀なハナシであるかは、誰にでもわかるよね。
それを、ただのおっちょこちょいな夢などではなく、
しっかりと現実にしてしまうのだから、店主の田中さんにはアタマが下がる。
相当辛いこともあっただろうに、
(僕だったら不安でマトモに寝られないよきっと)
それを、暗くならず、愚痴の一言も漏らさず、明るく前向きに書かれている。
とても愉しく読めます。
でもね。
もうちょっとさあ、お店をつくるプロセスや、
アルバイトをせずに古本屋一本で食べていけるようになるまでのいろいろを書いてほしかったなあ。
できれば時系列で。
単発のエッセイをまとめたものだから仕方ないかもしれないけれど、
ちょっと読みづらいというか、あまり入ってこなかったなあ。