「スペース」 加納朋子 東京創元社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

「この手紙の中にも謎はあったでしょう?」
手紙に秘められた謎、そして書かれなかった「ある物語」とは…「ななつのこ」「魔法飛行」に続く待望の駒子シリーズ第三作。


スペース (創元推理文庫)


※作中のトリックに触れています。未読の方はご注意を。






まさかこのシリーズ、続いていくものだとは思わなかったので吃驚です。



まあ、それはさておき。


このほのぼのとした文体と駒子のキャラクターから、


彼女にしてやられるとは予想もしていませんでした。


まさか叙述ミステリとは。



わざわざ友人たちを動物にたとえて表現しているところや、


駒子が仲良しの二人が出てこないところなど、


どうも怪しいなあと思いながらも、


まだ二人と出会う前の話なのかもしれないしなあ、と思ったりもして。


いや、作者にしてみたらこれほど騙し易い読者もいるまい、というところですよね。



後半の「バックスペース」は前半で駒子の身代わり(?)を務めた駒井まどかの物語。


どうもご都合主義のような気もしないではないですが、


まあ、物語がハッピーエンドに終わることにこしたことはありません。良しとしましょう。



前半で、手紙と駒子によって語られた物語が、


リアルタイムに一人称で進行していくのは、


何がなんだかいまひとつわかっていなかった前半部分に説得力を持たせる意味もある。


前半の謎に対する解決編を後半全部使ってやってしまったようなもの。


大胆だがすっきりした物語になっていると思う。