「神様からひと言」 荻原浩 光文社 ★★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。

入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。

実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた。

ハードな日々を生きる彼の奮闘の結末やいかに。



神様からひと言 (光文社文庫)



まだ書店員になる前、書店でPOPまでついて、数十冊が平積みになっていたので購入した。


荻原浩という作家も知らなかったし、こういうジャンルの小説もあまり馴染みがなかった。


しかし、これはなかなか楽しめた。


初めて読んだ萩原作品である。


競艇好きで遅刻魔の篠崎、オタクでロリコンの羽沢、失語症の神保ら、リストラ要員集団、変人の集まりに主人公の涼平は辟易とする。


もちろん、そのハードな仕事にも苦労させられる。


しかし、涼平も段々、仕事にも彼らにも慣れてくる。


それは涼平自身の頑張り(ラーメンを一度に全種類制覇するような!)につきる。



仕事というヤツは不思議なもので、それ自身がパワーになったりすることがある。


もちろん、仕事をするためにはエネルギーが必要で、


その英気を養うために休日があったりするのだが、


時には仕事自体がエネルギーの元になって、


仕事そのものもプライベートのことも頑張れたりすることもあるのだ。



少なくとも僕にはそういう経験がある。


きっと、この意見には多くのサラリーマンが同意してくれることと思う。



涼平の場合も仕事で奮闘していく中で、半年前に逃げられた彼女を探す意志を固めていく。


そして…彼女が出ていった理由にも思い当たる。



「珠川食品」はいい加減で、ぐちゃぐちゃでトンデモナイ会社ではあるけれど、


「お客様相談室」の面々は意外にもイイ奴らばかりだった。


イイ奴らだったからこそ、会社の中では浮いた存在になってしまったのかもしれないと思うくらいに。




笑いもある。


涙もある。


そして活力も与えられる。


なかなか素敵な一冊だった。