パソコン通信が生んだバーチャル・アイドル「姫」。
その正体を巡りパソ通仲間は大騒ぎを繰り広げている。
渋谷ハチ公前に〈姫〉がついに姿を現すという約束の日、その場所で一人の女子大生が惨殺された。
彼女は本当に「姫」なのか?
※ねたばらしを含む感想です。未読の方はご注意を。
伊集院大介は数年ぶりに再会したパソコンおたくの滝沢稔とともに、
未曾有の難事件に挑む…ということで、
ネットワーク世界を舞台に起こる事件の数々を栗本薫が見事に描いています。
刺殺事件の犯人であり、ネットワーク世界においても混乱の元凶であるダフネがとても怖いです。
だけど、それ以上に怖いのは、稔の友人であり、ネット世界のアイドル「姫」でもある姫野。
ネット世界の匿名性を利用した彼の無責任きわまりない行動、
そして面白そうというだけの理由で(まさに愉快犯というやつですね)人々を弄ぶ非常識な行動…。
この小説が書かれたのは95年。
まだウィンドウズ95がやっと発売されたばかりで、現在のように誰もが簡単にインターネットに触れるというような状況ではなかった。
そういう意味では、ここで書かれていることはある意味、予言のようなものだ。
栗本薫さんの先見性、そして彼女の世界観の構築の優秀さが出た一作と言えよう。