「キャットフード」 森川智喜 講談社 ★★★ | 水底の本棚

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慎重にご賞味を。
ネコvs.ネコvs.飼い主の推理戦は、前代未聞の結末へ。

「極上のキャットフードを作りたい」

化けネコ・プルートは人肉ミンチの生産に乗り出した。

コテージに見せかけた人間カンヅメ工場に誘(おび)き寄せられた四人の若者。

が、その中に人間に化けた黒ネコ・ウィリーが混ざっていた。

化けネコどうしの殺傷はご法度。一体どいつがネコなんだ? 食われたくないなら、頭を絞れ!


キャットフード (講談社文庫)



なんだろうなあ……こういう設定を思いつくアタマってのはどういうものなんだろう?


作者に訊いてみたいなあ。



ルールが決められたデスゲームは嫌いじゃないです。


いやむしろ積極的に好き。



このゲームのルールは、猫の世界で設定された法律で、ここで適用されるのはみっつ。



ひとつ。猫は罪もない猫を殺してはいけない。


ふたつ。猫が人間を殺すことは何の問題もない。


みっつ。猫が野良ではなく飼い猫の場合、その飼い主を殺してはいけない。



このルールに基づいて、化け猫チームVS人間3人+化け猫のバトルが展開される。


化け猫チームは、相手チームの、人間に化けている化け猫(ややこしいな)を殺さないように、人間だけを殺したい。

つまり、猫が化けている人間は誰かを探し当てたい。


人間チームに混じっている化け猫としては、仲間の人間を殺されないように、島を脱出したいのだけれど、あからさまに脱出を促すと、「あいつが化け猫か?」とバレてしまう。


「暴こう」という意思と「守ろう」という意思がぶつかり合う頭脳戦が面白い。


人間である名探偵、三途川が途中から加わるのだがなぜか化け猫チームに参戦。いや待てよ、お前そっちの味方かよ。




読み手には誰が化け猫ウィリーが化けている人間かはわかっているので、


化け猫チームがあれこれ仕掛けてウィリーをあぶりだそうとする罠と、それをウィリーがどう回避していくかが見どころ。


倒叙物のフーダニットといったところか。



「終幕」の会話は初めは訳がわからずに二度読み。


そこでウィリーが彼を連れてきたとわかって一旦はスッキリするものの、


最後にどうやってウィリーが彼を連れて来たのか、物理的に無理だろうという気がするところが、ちょっともやもや。