「ぶらぶらヂンヂン古書の旅」 北尾トロ 文藝春秋 ★★★ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

日本全国津々浦々、どこかでぼくを待っているまだ見ぬ古本に出会うため、今日もぶらぶら旅をする。

アテもなく歩き回れば、掘り出し物も予期せぬ出会いもたまにある。

ほしい本をつかみとる瞬間、胸がヂンヂンたぎるのだ。

日本の古本好きの夢を、北尾トロが実現しました。

旅や出張のお供に、家でのんびり寝転びながら、ぜひどうぞ。


ぶらぶらヂンヂン古書の旅 (文春文庫)



ネット古書店を営む北尾トロさんが、古本屋を巡る旅をする。


僕は書店員だけれど、多くの書店員がそう考えているように、古本屋を敵視することはない。


ブック○フのような節操のない商売をしている新古書店は問題外だけれど、


新刊書店ではカバーしきれない分野を補ってくれるのが古書店だと思っている。


新刊書店も古書店も、両方とも「本」という文化を守るために必要なものだ。

(しつこいようだが、新古書店は文化にはまったく必要のない存在だ)



閑話休題。


そんなわけで古書店も古書も結構好きなのだが、


このエッセイは…………ううーん、どうもなあ。



とにかく、何も事件が起きない。


ただただ、旅をして本を買い、そして読む。それだけの旅が延々繰り返されるだけ。



たとえるなら。


テレビ東京あたりがやっている、旬を過ぎた女優さんが二人くらいで旅をするような番組。


それを紙面でやっているって想像したら、面白くなさが伝わりませんか?


そんな感じ。



旅って言ってもそうそう面白いアクシデントなんて起こるわけないんだけど、


そこを何とか面白おかしく書くのがプロじゃないッスか。


もしくは、面白おかしくなるような展開に敢えて持っていくとか。


キクニさんの「本棚探偵」シリーズも古書蒐集のエッセイだけれど、


あっちは本当に抱腹絶倒の内容ですよ。特に何をしているわけでもないのに。



その面白さの違いは、両者が「たかもく本の街」に行った回を読み比べてみれば一目瞭然。



……って、比べたらさすがに可哀想か。