新人文芸編集者・都(みやこ)の「酒と校正刷(ゲラ)の日々」。タガの外れた、恋の行方は?
人生の大切なことは、本とお酒に教わった──日々読み、日々飲み、本創りのために、好奇心を力に突き進む女性文芸編集者・小酒井都。
新入社員時代の仕事の失敗、先輩編集者たちとの微妙なおつきあい、小説と作家への深い愛情……。本を創って酒を飲む、タガを外して人と会う、そんな都の恋の行く先は?
本好き、酒好き女子必読、酔っぱらい体験もリアルな、ワーキングガール小説。
北村先生、どうしてこんなに女性目線?
思えば。
北村先生がまだ覆面作家で「私と円紫師匠」シリーズを書いていらっしゃったころ、
北村先生は女性だという推理の方が多かったように思う。
(僕も北村先生は女性ではないかと思っていた)
でも、本作を読むと、そういう推理もさもありなんという感じですよねえ。
(ちょいちょいオヤジギャグが入るあたりは……目をつぶるとして)
本当に、女性の心理描写が秀逸です。
とは言っても、僕は女性ではないので、
女性が読んだときにどう思うかはわからないのですが。
少なくとも男性読者を納得させるだけの説得力はあるわけです。
飲みニケーションという言葉も時代的にもはや死語に近くなり、
特に書店員なんてやっていると、
ホントかよと思うくらい下戸が多いし、
そもそも積極的に人に関わりあいたくない人が多いから(あ、ウチの書店だけ?)
仕事帰りの一杯飲みながら、仕事の愚痴をこぼしたり、後輩に説教してみたり、先輩にされてみたり、
なんてことがほとんどないんですよね。
みんなウチに帰ってゲームをしたりマンガ読んだりしたい。
もしくは話の合う人とだけしゃべりたい。
書店員になる前はそういうのが当たり前にある会社にいたので、
今の状況は違和感を覚えるのだけれど、まあ仕方ないかと諦めてもいる。
だからこそ、この本を読んで、いいなあ羨ましいなあと思う。
飲んだくれて時折、失態を演じてしまう都さんは決して羨ましくはないけれど、
でも、いつだって一緒に飲める相手がいるのは「いいなあ」と思う。
上司、先輩、同僚、恋人……。
都さんはお酒を介して素敵な人間関係を築いていく。
僕もお酒は大好きだし、年がら年中飲んでいるけれど、
でもやっぱり一人で飲むのはつまらない。
一緒に飲む人がいてこそ、お酒は美味しい。
僕も都さんたちの仲間に入って、一緒にお酒を酌み交わしたい。
そんな風に思える、温かで優しい一冊です。