「さよならの手口」 若竹七海 文藝春秋 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

仕事はできるが運の悪い女探偵・葉村晶が帰ってきた!

探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。

入院した病院で同室の元女優に二十年前に家出した娘探しを依頼される。

当時娘を調査した探偵は失踪していた……。


さよならの手口 (文春文庫)



ひさしぶりだね、葉村。


10年ぶり?


いや、13年ぶりなのか。


そんなに君に会っていなかったとは思わなかった。


また会えて嬉しいよ。



小説の登場人物は何年経ってもちっとも歳をとらなかったりするけれど、


君はしっかり歳をとっていて、


昔のように身体が動かなかったり、疲れも抜けにくかったりするのかもしれないけれど、


自分からトラブルを引き寄せて、引き寄せたトラブルの中に頭からダイブしていくような、


そんな性格はちっとも変っていないよな。



そろそろ、それじゃ身体がもたないんじゃないか?


今回の事件でも君は何回ケガをした?


そもそも、最初の事件だってさ、汚水に浸かった白骨死体に頭突きをかますという、


フツーじゃ考えられない体験から巻き込まれていったんじゃないか。




君はミステリ専門書店のアルバイトとして生きていくつもりだったのかもしれないけれど、


はっきり言っておくよ、それは無理だ。


そういう平穏な生き方は君には似合わない。


そもそも、ただアルバイトをしていただけなのに、倉嶋舞美というトラブルメイカーと出会い、


事件に巻き込まれていったじゃないか。



今回、君は細かいものまで数えると、6つの事件に巻き込まれている。

っていうか、自分からそこに飛び込んでいるんだけどな。



かつての名女優・葦原吹雪の娘探しだって、


どう見たってどう考えたって面倒くさいことになりそうだっただろ?


それなのに君は引き受けてしまう。


もう、君は根っからの探偵なんだな。



それはたぶん、もう一生変わらない。



ラストシーンで、君は探偵としての自分を取り戻したしな。



また、近いうちに会えるのを楽しみにしている。


今度は、十年も待たせないでくれよな、葉村晶。