SMバーでM嬢として働くミチは薬とアルコール漬けの日々を送っていた。
だが、幼馴染のタミーとの再会からミチの日常が変容していく。
タミーが関わっているという残虐な死体写真が集められた“地獄へ堕ちよう”という裏サイトの存在。
さらに自らにおぞましいほどの身体改造を求める、店の同僚リスト。
出口のない欲望が絡み合い、凄惨な事件が起こる。
最年少で第32回横溝正史ミステリ大賞を受賞した衝撃の暗黒青春ミステリ。
痛いハナシはすっごく苦手です。
ただグロい、そしてエロいだけのストーリーではないのが救いだけれど、
それでもやっぱり痛いハナシはいやだなあ。
けっこうな頻度で読み飛ばしたよ?
「痛みは想像力」だという言葉には少しばかり感心した。
その通りだと思う。
幻肢痛を例に出すまでもなく、痛みは想像力で増幅もするし、減少もする。
こういう小説を読んで「痛そうでいやだ」と僕が思うのも想像力だ。
もっと言えば「痛み」だけでなく、すべての感覚は想像力だと言い換えることもできる。
ヒトの想像力の可能性。
それを行使せずにただぼんやりと生きているのならば、それは生きているうちには入らない。
彼らは痛みとともに死を迎えたけれど、
それは肉体の死であって想像力の死ではない。
そんな益体もないことを考えながら読んでしまった。
そんなことを考えているくらいだから、ミステリとしてはたいしたことはない。
後半になるにつれ、段々、テイストが軽くなるというか、人の死が軽くなるというか。
人の死を軽く扱うミステリはたいていの場合面白くはないのだ。
まあ、そのぶんリーダビリティは高く、すいすいと読める。
読みやすい、は誉め言葉ではないかもしれないけれど、
こういうタイプの小説で「読みやすい」というのはひとつの武器かもしれないなあ。