「さあ、地獄へ堕ちよう」 菅原和也 角川書店 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

SMバーでM嬢として働くミチは薬とアルコール漬けの日々を送っていた。

だが、幼馴染のタミーとの再会からミチの日常が変容していく。

タミーが関わっているという残虐な死体写真が集められた“地獄へ堕ちよう”という裏サイトの存在。

さらに自らにおぞましいほどの身体改造を求める、店の同僚リスト。

出口のない欲望が絡み合い、凄惨な事件が起こる。

最年少で第32回横溝正史ミステリ大賞を受賞した衝撃の暗黒青春ミステリ。


さあ、地獄へ堕ちよう (角川文庫)



痛いハナシはすっごく苦手です。


ただグロい、そしてエロいだけのストーリーではないのが救いだけれど、


それでもやっぱり痛いハナシはいやだなあ。


けっこうな頻度で読み飛ばしたよ?



「痛みは想像力」だという言葉には少しばかり感心した。


その通りだと思う。


幻肢痛を例に出すまでもなく、痛みは想像力で増幅もするし、減少もする。


こういう小説を読んで「痛そうでいやだ」と僕が思うのも想像力だ。


もっと言えば「痛み」だけでなく、すべての感覚は想像力だと言い換えることもできる。




ヒトの想像力の可能性。


それを行使せずにただぼんやりと生きているのならば、それは生きているうちには入らない。


彼らは痛みとともに死を迎えたけれど、


それは肉体の死であって想像力の死ではない。



そんな益体もないことを考えながら読んでしまった。



そんなことを考えているくらいだから、ミステリとしてはたいしたことはない。


後半になるにつれ、段々、テイストが軽くなるというか、人の死が軽くなるというか。


人の死を軽く扱うミステリはたいていの場合面白くはないのだ。


まあ、そのぶんリーダビリティは高く、すいすいと読める。


読みやすい、は誉め言葉ではないかもしれないけれど、


こういうタイプの小説で「読みやすい」というのはひとつの武器かもしれないなあ。