「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」 青崎有吾 東京創元社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

相変わらず学校内に住んでいる裏染天馬のもとに持ち込まれる様々な謎。

学食の食品をめぐる不可思議な出来事、吹奏楽部内でのトラブル、お祭りの屋台のお釣りにまつわる謎ほかに、裏染の妹の華麗な謎解きを加えた、全五編+「おまけ」つきの痛快推理連作集。

シリーズ第三弾。なな、なんと“平成のエラリー・クイーン”が、日常の謎に挑戦。


風ヶ丘五十円玉祭りの謎



※ねたばらしありの感想です。未読の方はご注意を。




明晰な頭脳を持ちながら、学校に住み着いてひきこもる一風変わった探偵役、裏染くん。


それにしても学校に住み着いている場合、ひきこもりって言うのか?



その裏染くんが、ふたつの長編を経て、「日常の謎」に挑みます。



「もう一色選べる丼」は、何となく余詰めがありそうな気がするのだけれど……。


箸が汚れていないからって……それはそんなに気にすることか?


って言うか、食べ終わったあとの箸ってそんなに汚れているものなのか?




「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」はプロバビリティの犯罪。


本格ミステリファンとしては、五十円玉って訊くと、若竹七海さんのアレを思い出してしまうのだけれど、


本作はソレとは何の関係もございません。


本作の謎は「両替される二十枚の五十円玉」ではなく、「乱発されるお釣りの五十円玉」です。


意識はしているのかもしれないですけれど。




「針宮理恵子のサードインパクト」は……ミステリとしてはあまりインパクトはなくて。


どちらかと言えば、ノロケですな。ノロケ。


まあ、お幸せに。


個人的にはこういう「ミステリ」なんだか「青春小説」なんだか、よくわからない作品好きではないです。


「青春小説」「恋愛小説」としてこの作品に出会ったならば、


「青春小説なのに、ミステリとしても楽しめるじゃん」と喜んだかもしれませんが、


「ミステリ」として出会ってしまったら、まことに中途半端。


全編を通して言えることだけれど、無理にユーモアタッチにしなくていいんだって。


別にそれは期待してないから。




「天使たちの残暑見舞い」は人間消失の謎。


人気のない三階の教室で抱き合う二人の少女が、こつ然と姿を消した!




…………えーと、これ、柚乃たちに再現させる必要ある?


こういう、無理やりユーモアタッチに仕上げるカンジ、要らないんだって。ホントに。


真相もしょぼいしなあ。


避難訓練中だったのではしご車で降りたのです、って………一歩間違うとバカミスになるぞ。




「その花瓶にご注意を」はこの短編集で一番お気に入り。


論理展開が僕の好みです。


(これだって完璧というわけではないけれど)他の作品は「推理」よりもむしろ「空想」の範疇にあるような気がするのだけれど、その中で本作は「推理」と呼んでいいのではないかな。


論理が想像力という名の翼を得て、大きく飛翔する姿は本当に美しいものだけれど、


ただの「妄想」があさっての方向に飛んでいくのは勘弁してほしいものだからね。