第三回メフィスト賞。
ギャグと謎解きの革命的コラボレーション。空前絶後のアホバカ・トリック。
アホバカ・ミステリと作者自ら名乗るだけのことはある。
(この「アホバカ・ミステリ」というセンスの無いネーミングが蘇部健一らしくて、たまらんのだよなあ)
本当に空いた口が塞がらない話ばかりで、
これを読んで怒るなんていうのは野暮以外の何者でもない。
呆れながら読むのが正しいのだ。
この本、実は文庫とノベルズ版の両方を持っている。
蔵書スペースの関係上、基本的には文庫で出版されたものは買い直し、
単行本やノベルスは古書店に持っていくというのが僕の定番なのだが、
この本に関しては両方とも保存してある。
収録作品が何作か違うというのも理由のひとつだが、
最大の理由はノベルズ版の作者のあとがきが面白いからだ。
面白いといっても「笑わせてくれる」という意味ではなく、
何というかこう、作者の自己満足ぶりが哀れみを誘うというか、惨めたらしいというか…それがまた何ともいい味を出している。
文章力は小学生レベルだが、実感がとてもこもっていてある意味、名文だ。
タモリをはじめとした有名人からかなりネタを頂戴しているようだが、それがテレビを観ていて、という一般レベルなところがもの悲しい。
放送作家時代に思いついた…というのではなく、放送作家を目指していた時代に…というのも何というか笑える。
あらゆる点においてレベルの低い小説だが、そのレベルの低さが持ち味になっているところが妙味だ。
たとえば「しおかぜ⑰号四十九分の壁」は下らないにも程があるという一作だが、
あまりにも下らなくて盲点になっているだけに、
相当の推理ファンでも真相に行き着くことはないのではないだろうか。
下らないが割と気に入ってはいる。