亡父が残した京都の「人形館」に飛龍想一が移り住んだその時から、驚倒のドラマが開始した。
館には父の遺産というべき妖しい人形たちが陣取り、近所では通り魔殺人が続発する。
やがて想一自身にも姿なき殺人者がしのび寄る。
名探偵島田潔と謎の建築家中村青司との組合せが生む館シリーズ最大の戦慄。
※ねたばらしありですので、ご注意を。
この殺人の動機はある意味、ミッシングリンクのようなもので面白い。
「囁きシリーズ」でのパターンを踏襲している感じで、
過去の因果が殺人の動機になっており、それが小出しに出されていくというものだ。
多重人格というのは本来、アンフェアなものになってしまいがちだが、
それを逆手に取るような形でギリギリうまく利用している。
本物の「島田潔」が登場し、
被害者=犯人=探偵役という図式が明らかになるシーンは少なからず衝撃的なものだ。