同級生だった悟と裕子は親の反対を押し切って結婚。
幸せに暮らす二人だったが、やがて裕子の身体に変異が現われはじめ、次第に背丈が小さくなっていった。原因のわからない不思議な若返り現象は進み、徐々に孤立を深める二人。
寄り添いあい、そして待ち受ける哀しい結末へと向かってゆく……。
あらがいようのない“時の逆転現象”のなかで、儚く浮かび上がってゆく二人だけの愛のかたち。
徐々に若返る裕子。
24歳から十代へ、高校生へ、中学生へ。
人妻であるということが不自然な年齢にどんどん若返っていく。
ならばその先に待っている結末はひとつ。
いずれくる消滅と別離。
近い未来に、別れが必ず待っていると知りながら、
それでも離れることはできずに彼女に寄り添っている。
それが、とても優しくて、でも哀しくて。
こういう物語は現実にもある。
いや、徐々に若返るなんていう奇病があるわけないけれど、
その逆で、人は必ず時間の経過とともに老いる。
その過程で、記憶も失い、そして最後は必ず消える。
若返ろうが、老いるのであろうが、必ず最後には別離がある。
別れが来るというだけなら、それは誰にも平等に訪れる。
それは一方が心変わりをしたときかもしれない。
それは一方が亡くなったときかもしれない。
いずれにせよ、そこには永遠は存在しない。
絶対に。
だけど、こんな理不尽な形で、別れを強要されることはない。
誰に、二人を別つ権利があるというのか。
憤らずにはいられない。
この物語は。
理不尽過ぎる過酷な運命に晒されながら、
それでも決して還る場所を見失わなかった、二人のお話。