若い女性を襲い、死体から人差し指を切り取る連続殺人鬼“指蒐集家”が社会を震撼させる中、捜査一課のエース、西條輝司は窮地に立たされていた…。
緻密な構成で不器用に生きる男たちを活写する長編推理。
社会を震撼させるような劇場型犯罪を起こす知能犯と、
それを防がんとする警察(もしくは名探偵)という図式が僕はかなり好きなようです。
かなりワクワクして読みました。
ページをめくる手がなかなか止まらなくて、
結局、えいやっと一気に読んでしまいました。
評価はちょっとオマケかなという気もします。
シチュエーションが好きだという点で加点されていますね、きっと。
この物語の主人公(探偵役)はクールでスマートな若きエリートの西條刑事だけれど、
彼の同僚や後輩、または西條を目の敵にする他の刑事たちもキャラが立っていて、
一種、群像劇のような面白さもあります。
警察組織という特殊な社会を見事に物語の中に描ききっていると思います。
最初は人称がコロコロ変わるので読みにくいかなと思ったけれど、
慣れてくると彼らの個性的な仕事ぶりにハマりました。
物語中盤からは西條がプライベートのスキャンダルが原因で警察を追われることになり、
しかもホームレスにまで堕ちていく始末。
個人的に事件の捜査を続けようとするも、
かつての仲間たちは刑事でなくなった彼に非情な言葉を浴びせかける。
一体どうなってしまうの……と思わせておいて、
西條の愛人であった女性が殺害されたことで事件は急展開。
意外性のある犯人象、連続殺人の仕掛けも画期的とは言えないものの効果的な使い方がされていて、
長編の着地としてはかなり納得の出来です。
長編というのはやっぱり一気に読ませるリーダビリティがあるかどうかが肝だなあ。