「アクセス」 誉田哲也 新潮社 ★★★ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

親友の死から立ち直るまもなく、可奈子の携帯が着信した。

電源を切っても聞こえる押し殺した笑い声――「おまけが殺した」。
毎日はフツーだった。そう、「2mb.net」を知るまでは。
誰かを勧誘すればネットも携帯も無料というプロバイダに登録した高校生たちを、奇怪な事件が次々襲う。

自殺、失踪、連続殺人…。仮想現実に巣食う「極限の悪意」相手の、壮絶なサバイバルが始まった!


アクセス (新潮文庫)


※ちょっとねたばらしありです。






「殺されたっ!」って思うほどひやっとすると、


身体と魂(?)が離れやすくなってしまい、


その間隙をぬって悪霊(?)がインターネットの世界から身体を乗っ取りにやってきてしまう。


あー……何か、こう書くとものすごく単純で浅い感じのお話に聞こえてしまいますね。



まあ、実際そうなんですけど(笑)



ネットに巣食う悪意。その悪意の固まりのような霊が人間の身体を乗っ取るというストーリー。


プロフとか掲示板でのイジメで自殺する子供たちがいる今、


「ネット上の悪意が人間の心を奪う」というのは決して冗談ごとではありません。


暗喩と言うにはあまりに直接的なほど、現実に則した物語だと言えます。


何だか納得してしまいました。




逆に言えば、そのぶん、ストーリーに意外性はありません。


悪霊との戦いにもさほど捻りはないし、よくある(しかもそれほど恐くない)ホラー小説のようでした。


可奈子の蕎麦アレルギーの伏線、


それから雪乃の身体を使って尚美が生還を果たすという結末は少し巧いなと思いましたが……


でも、それだけかなあ。


もちろん、真っ直ぐでシンプルなストーリーそのものが嫌いというわけではないし、


わりと面白くは読めたんですけどね。