「夜宴」 愛川晶 光文社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

「すでに殺されていた男」が運転し、車ごと道路から空へジャンプした?
謎の転落事故があった有料道路では、その前日、宮城県警の桐野刑事が夜宴の舞踏に興じる魔女に遭遇し、直後、大事故に巻き込まれてもいた。しかしなぜかキリンさんも同乗の女性も無事。
伝説の名刑事を父に持つ美少女、根津愛は、現場写真から転落事故の真相はほぼ分かったと言うが…。

連続どんでん返しのラストも圧巻な本格ミステリ。



夜宴 (光文社文庫)




※ねたばらしありの感想……というより既読でないと意味がわからないでしょうなあ。





僕は根津愛のファンです。


「です」ではなく……でした、かな?


このシリーズ、さっぱり続編が出ないからね。



昔は、彼女のサイトも欠かさずチェックしていたほど。

だから…正直なところ、彼女のキャラクターだけでけっこう読めてしまうんですよね、このシリーズは。



今回は、「死体が運転する車が転落した謎」よりも、


「キリンさんがなぜ助かったか」の謎の解決の方が興味深かったです。


伏線もしっかりとあり、合理的な解決がなされ、本格推理の醍醐味という感じ。


車がまっぷたつになっている、というのはかなり意外な展開ですよね。

僕はニコイチという言葉を知っていたにもかかわらず、思いつきませんでした。


鈍いなあ、ホント。

「死体が運転する車が転落した謎」のほうは、車が支え線に乗っかっている絵や、実際に起こった事故の写真が掲載されていたりして、状況がわかりやすくなっているのはマルですね。



ところで、その解決編ですが、


愛ちゃんが推理をもったいぶってみたり、


嘘の推理を混ぜてみたり、なんだかラストがピシッと決まりません。


愛川作品にはこういうの多いのですが、


推理は一発、「名探偵、皆を集めてさてと言い」ってヤツでいいと思うんですよ。



せっかくの名推理も小出しにしてしまっては、今一つ魅力に欠けるというものなのだがなあ。