獄の棘とは刑務所の鉄条網のこと。
この閉ざされた内部では、外からは窺い知れない様々な事件が起こっている…。
いじめ、内部告発、偽装結婚、脱獄……新米刑務官が見た、塀の仲の真実とは……?
獄中という、非常に特異な環境が舞台のミステリ。
主人公は若手の刑務官で、なぜかキャリアの上司に気に入られ、
刑務所内で起こる事件の調査活動を依頼される。
主人公は、同僚の先輩刑務官たちに遠慮しながらも、事件を調査していくという連作短編集。
読みどころは、刑務所という特別な環境でしか起こりえないような事件の数々。
通常のミステリは、フツーの人々の中に混じった犯罪者を探し出すもの。
ところが、この世界は周り中がすべて犯罪者。
その中から、さらに異物を探し出すというシチュエーションが興味深い。
トリックらしいトリックもなく(唯一、暗号トリックがあったが)、ミステリとしての面白さには欠けるが、
人間ドラマが好きな人にはおすすめかもしれない。
刑務所の中であるにもかかわらず、物語の持つ雰囲気には重厚感はない。
扱っているテーマは重いのに、どちらかと言えばライトな感じすら。
どこにいようと、それが犯罪者であろうと、人間は人間。
そういうことだろうか。