Jリーグは次節、横浜Fマリノスが勝てば優勝が決まる。
対戦相手は、わが川崎フロンターレ。
横浜は必勝を期して、等々力スタジアムに乗り込んでくることだろう。
ホームで対戦相手がおおはしゃぎする姿を見たいわけではないが、さりとて、横浜をぶっ倒してマリノスサポータの罵声を浴びるのもあまり気分のよいものではない。
そもそも、川崎フロンターレはドリームクラッシャーとして結構名を馳せているのだ。
何の自慢にもならんが。
2000年にセレッソ大阪の初優勝を阻止したのを皮切りに、数々の優勝や昇格を妨害し(セレッソ大阪は2006年にもフロンターレに最終節で残留を阻止されている)、某掲示板では「おくりびと」の二つ名を送られている。
マリノスサポータにとっては、最終節に対峙するのにはまことにいやな相手であろう。
でも悪役と言えば、さらに上がいる。
同じく川崎をホームにしていた、ロッテオリオンズである。
オリオンズの空気を読まなことと言ったら、川崎フロンターレなど目ではない。
最も有名なのは、今も語り草になっている、いわゆる「10・19」であろう。
10月7日から19日にかけて12日間でダブルヘッダー1回を含む13連戦を戦って、満身創痍の状態で必死になって最終戦にたどり着いた近鉄バファローズに対し、時間切れ引き分けにもちこんで優勝を阻止するという、何とも消化不良な最後を迎えさせた。
そのときオリオンズは最下位が確定していて、ここでひとつばかり引き分けを増やしたところで何の意味もなかろうと思うのに、なぜか球史に残るような名勝負を繰り広げてしまうのである。
痩身のエース、阿波野秀幸が腕も折れよとばかりに渾身の力で投げ込むボールを、勝とうが負けようがどうでもいいチームが打ち込んでいく姿は、悪鬼の所業とも言えた。
(いや、もちろんプロとしていつでも真剣勝負は当然のことなのだが)
しかし、僕がオリオンズが本物の悪役(ヒール)だと思うのは、この試合ではなく、95年のオリックスブルーウェーブとの試合においてだ。
9月15日から17日にかけての、マジック1で迎えた千葉ロッテマリーンズとのグリーンスタジアム神戸での3連戦。
ここでひとつでも勝てばホームのファンの前で胴上げができる。
そんな状況で、マリーンズは必死に最後の抵抗を見せた。千葉ロッテの見事な3連勝。
ブルーウェーブは地元での優勝のチャンスを逃した。
マリーンズは2位とは言え、最終的には12ゲーム離されて逆転優勝の可能性など微塵もなかった。
ブルーウェーブの優勝はもはや確定事項だったのだ。
だったら、地元で胴上げをさせてやってもよかろうと思うのだが、マリーンズはそうはさせないのである。
伊良部秀輝、エリック・ヒルマン、小宮山悟という先発の3本柱を3連戦につぎ込んで全力で阻止するのである。
この年、伊良部は11勝をあげ最多奪三振と防御率1位、ヒルマンは12勝で防御率4位、小宮山は11勝で防御率3位。
このエース級をつぎ込まれたらいくらブルーウェーブが必死になってもなかなか勝てるものではない。
もちろん、勝利を目指すマリーンズの精神は非難されるものではない。
普通なら。
だが、この年はふつうじゃなかったのだ。
そう。95年は阪神大震災が起こった年。
ブルーウェーブは「がんばろうKOBE」のワッペンを腕につけ、神戸市民に勇気を与えようと、懸命に優勝目指して頑張っていたのだ。
神戸市民の目の前で胴上げを見せたい。
それはブルーウェーブの願いというよりは、もはや日本国民の願いと言っても過言ではなかったろう。
そんな状況でも、3連勝。
それも、なんとなく勝っちゃったというのではなく、エース3本柱をつぎ込んでむきになって勝ちにいった3連勝。
日本中が「いや、おまえらの勝つとこなんて見たくねーし」と思っている中での3連勝。
これほど空気の読めないチームがかつてあっただろうか。
いや、ない。
僕が応援しているチームはこういうチームなのである。
マリサポのみなさん、今回も空気が読めなかったらごめんなさい。