専門知識ゼロの肉体派刑事、狡猾な美術品詐欺事件に悪戦苦闘!
やる気と体力は人一倍だが、美術にはとんと疎い新米刑事・三田村豪気が、違法スレスレの詐欺的商法を続ける美術品販売会社に挑む!
「美」と「美術」、「ホンモノ」と「ニセモノ」をめぐる、異色の捜査小説。
猪突猛進型の主人公と、それを制御する博覧強記の探偵役。
こういうコンビっていろんな作品で使われていますが……ありきたりすぎてつまんない。
美術ミステリは過去に数多くありますが、僕の中での白眉は、
「ギャラリーフェイク」(細野不二彦)
なんですよね。
(漫画じゃん。って言わないでくださいねー面白いんですから)
「ギャラリーフェイク」の主人公コンビも本作と似たタイプなんですが……
サラは三田村クンほど馬鹿じゃない。
正義感が強く、情熱的過ぎて仕事に失敗をしてしまうというキャラクターはいくらもいますが、三田村クンはちょっと限度を超えているでしょう。
どうやって公務員試験に合格したの?と訊きたくなるくらいの、おバカっぷり。
ここまでいくと、もはや微笑ましいレベルはとっくに通り越しています。
その三田村クンの馬鹿っぷりに引きずられているわけではないのでしょうが、全体的に登場人物がアホすぎて、美術ミステリとしての面白さはまったくありません。
警察側も、サギにかかる側も、美術サギの会社の側も。
アタマの良い人間が一人も出てこないんだもん。
美術ミステリの面白さは、贋作づくりのテクニックやそれを売りさばくための騙しの手法、そしてそれを暴く側の冷静で正確な審美眼がぶつかり合うところにあるのだと思っています。
騙す側と暴く側がそれぞれの叡智の限りを尽くして戦うところが美術ミステリの眼目ですよ。
言い換えれば、「智のゲーム」なのです。
「智を戦わせるゲーム」の登場人物たちがあほうでどうすんの。
全体的に広がった風呂敷を畳み損ねている感じもするし……何もかもが中途半端。
暇つぶし程度の面白さしかありませんでした。