いすみ鉄道キハ52形 | 車内観察日記

車内観察日記

鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

房総半島横断鉄道の右翼を担っているいすみ鉄道、沿線人口が減少一方に傾く中で経営の建て直しと乗車人員アップが必須となる中、ここの元鉄ちゃん社長が考えたのは、古い国鉄型車両を導入して観光列車として仕立て上げることでした。

 

そこで目を付けたのが、かつて大糸線のJR西日本区間で活躍しキハ120に引導を渡したキハ52。廃車後いすみ鉄道からJR西日本へ譲渡の打診を行ったところ、「それは会社としてですか、鉄道ファンとしてですか」と質問され、自信を持って「会社としてです!」と返答し、JR西日本も快諾し晴れて導入となったそうな。

 

導入後は後に追加導入されたキハ28と共に有料観光列車として運行を開始した「急行」に使用されています。

 

2018年は房総地区準急運転開始から60年ということで、かつて走っていた準急列車のヘッドマークが取り付けられていました。

 

サボは…あらら、こちらは「夕凪」ではなく「房総」なんですね(笑)  それにしても、一度塗り替えしている割には塗装が割れてきていますね…。「そろそろまたクラウドファンディング、やっちゃいますか?」と思っていた矢先、再び実施され目標金額にも無事届いたそうな。

 

車内です。私は大糸線時代には残念ながら乗車出来ませんでしたが、国鉄クオリティたっぷりの内装を維持していると思います。「国鉄キハ52」で見るとトイレが付いているものですが、JR西日本時代に撤去されています。

 

ドアです。現在JR線上に残る国鉄型車両ですらステンレス仕上げドアばかりな中、塗りドアが残されています。

 

ドアは完全手動式、これはいすみ鉄道でも変わりません。

 

ドア上には大糸線時代の路線図がありますが、北陸本線が近隣3駅のみの表示、大糸線ですら終点の南小谷が「至」で省略されるなど、JR西日本大糸線モンロー主義を貫いています(^^;;

 

運転台です。普段は2両編成を組んでいるので、「最前面」の方が正しいかもしれません。晩年はワンマン運転対応のため、仕切り扉の撤去とそれに代わるバーの取り付け等が行われています。ドア付近には整理券発行機が残されていますが、キョンシーのごとく上から沿線やこの車両の写真が貼られています。

 

反対側の運転台です。こちらは逆に「車端部」扱いでしょうか。アテンダントさんのアナウンスはこちらで行っており、座席が取り払われ各種サービススペースをこちらに集約しています。なおキハ28共々、乗降は連結面に近いドアからとなり、両先頭寄りのドアは常時締め切り扱いとなりますのでご注意下さい。ホームに「キハ」と赤字で書かれている駅もありますので、乗車の際にご参考下さい。

 

天井です。キハ40系列にも実施された冷房改造が行われており、相変わらず一部の荷棚が潰されています。ダクトと共に枕木方向に補強用と思われる梁も入っていますね。

 

送風補助のために扇風機が残されています。中央にはJR西日本のデザインがそのまま残されていますね。

 

窓です。二段窓が並び、窓枠の下辺が少しだけ広げられ肘掛け兼テーブルとなっています。テーブルとしてはちょっと心許ないですが…。窓は開閉可能ですが、節度ある範囲にしておきましょう。

 

柱には扇風機のスイッチと温度計が有ります。こんな所に温度計がある車両も珍しいですね。

 

座席です。かつて走った北陸地区はオレンジ色のモケットが多かった中、国鉄型車両の正装アイテムのひとつ、青いモケットが残されています。

 

いつもの通りに書くと、窓側の足元には配管が有り、シートピッチも狭く背ズリ上部が薄く今となっては誉められたものではありませんが、背ズリ下部と座面の角度取りはこの時代になっても理想的なそれは変わりませんし、今や昭和世代のみならず平成世代(…の中の一人です)でもこの窮屈さを求めに全国から人がやって来るわけで、それ自体が観光のひとつになるのです。

 

肩部の持ち手もカマボコ形のままですね。これを見られるのも、今やここと北陸で走る413系くらいじゃないでしょうか。

 

窓側には栓抜きも残ります。岡山みたいに瓶のコーラを売ってみてはいかがでしょうか。

 

ドア横のロングシートです。背ズリ薄め、乗車時間を考えればどうにか問題無いレベルですが、急行料金払うならボックスシートを取りたいのが皆様の本心でしょう。

 

優先座席とセットになった座席です。JR西日本標準であった茶色いモケットが残っており、近年緑色がベースとなったモケットへの変更が進んでいるだけにこちらも貴重品となりそうです。

 

最前面の5人掛けロングシートです。袖仕切りはシンプルにパイプ式、一応肘掛けとしての役割は果たしております。

 

キハ28との連結面にあるいわゆる「サービスコーナー」です。記念スタンプはここで押すことが出来ます。

 

向かい側には記念撮影用のボードや沿線のチラシがあります。何かいい情報はこちらにて。

 

また車両オーナー制度を実施しており、支援された方は製造プレートタイプの特製プレートが2年間掲示されます。結構な金額なので私は手が出ないですが、この車両に思い入れがある方達により運行が維持されているのでしょう。

 

そして元社長さんが社長さん時代に仰られていましたが、この車両は将来的来るであろう引退の時は、引退運転もなく突然運転を終了する予定なんだそうな。ただでさえ老朽化して引退した車両を譲り受けているわけで各部の疲労・磨耗は相当深刻で、静態保存している同系列車両からかき集めて何とか運行を維持している状態です。元々苦境であった会社ですからJRのような整備体制が整っているわけでもないので、打つ手無しともなればそれが最期の運転、だから早めに乗りに行くのが吉だそうな。2019年度から国鉄型車両で運転される列車の本数が削減されましたので、いよいよ現実味を帯び初めているのかもしれません。

 

いつまでも あると思うな 親とキハ。