小田急50000形 | 車内観察日記

車内観察日記

鉄道の車内の観察する日記ですよ。目次に記載した「☆お願い☆」をご一読の上、ごゆっくりどうぞ。

1996年に半ば通勤特急用車両として登場したEXEはその使命を果たせてはいるものの、展望席が無いそのデザインは箱根への観光客減少に直結していたくらいに観光特急として「失格」の扱いを受けていた上、ロマンスカーのために作られたと言っても過言でない程のブルーリボン賞を「該当無し」に阻まれて逃す位には残念な特急型車両だったのでしょう。これに危機感と気付きを持った小田急、2005年に10000形の置き換えと箱根特急・ロマンスカーの復権をかけて新たなロマンスカーを送り出しました。

 

それがこの50000形です。キーとも言えた展望席も復活し、スピード感を持ったシャープなデザインとなっています。そうそう、編成はこれまでの11両編成から10両編成となり、車体長が長くなっています。また目立たないところではありますが乗り心地の点ではかなり力を入れており、カーブでの遠心力を打ち消すために台車に連接車体としては世界初の空気バネ車体傾斜装置を搭載し、その他にも横揺れを打ち消すフルアクティブサスペンション、カーブでの軋み音を低減させるために輪軸をカーブに合わせて動かせる操舵台車など、「やれるだけのことはしてやった」感は相当なものです。めちゃくちゃお金かかっています。

 

「VSE」、"Vault Super Express"の愛称が付いており、各所にその文字が入れられています。"Vault"とはアーチ型天井の意味で、車内にそのデザインが取り入れられています。その様子はまた後程ご紹介しましょう。

 

まずはデッキから、ドアです。空気式のプラグドアとなっています。照明をスリットから漏らすようにしており、入口から入った瞬間から魅せる心意気、さすがです。

 

くずもの入れは飲料系とその他で分別されています。飲料系は投入しやすいように口が斜めになっています。

 

トイレです。手前の男性小用は横引き式の扉、共用トイレは車椅子対応とも言えるカーブを描いた形状となっています。

 

洗面台です。ロマンスカーの伝統というか美徳というか、通路との間には暖簾が掛けられています。小田急に限らず特急型車両にもカーテンの類いは付いていますが、常時仕切られているのは少数派です。ちなみにその暖簾、さりげなくVSEのロゴ入りです。

 

中にお邪魔しました。蛇口はセンサーによる自動式、液体石鹸も備わります。

 

で、ロマンスカーと言えば「走る喫茶店」の異名を持つ程車内サービスに力を入れていたこともあり、車内販売スペースが備わっています。現在はカートによる移動販売に切り替わったため、車内販売準備スペースとして使われています。

 

その向かい側には何やらモニターがありますが、現在は特に何も映されておらず…。

 

連結面です。連接車体らしく、渡り板は円形をしております。幌はカバー付き、この辺りもぬかりありません。

 

さてようやく車内です。赤いモケットはロマンスカーで長年採用されてきた色ですね。忘れていけないのはやはりボールト天井で、車内が広々として見えます。

 

車端部です。仕切り扉は全面ガラス製、「走る喫茶店」と言われていた時代からここも変わりません。仕切り扉上にはLCDディスプレイが備わりますが、列車案内がなんだか事務的です。車内のLCDが発達し出したのは10年代前後なので、今作ればもっと凝ったものになっていたことでしょう。

 

さて天井です。これ程までに見事な弧を描いた天井も中々見られません。照明は間接照明で、それだけでは照度に不安があるので座席すぐ上にはLEDの直接照明が補助的に入っています。その補助照明も決して明るすぎないものとなっています。

 

窓です。1枚で2席分となっており、日除けはフリーストップ式のロールカーテンです。中央にカーテンワイヤーを仕込んでおり、なるべく眺望を妨げないようにはしていますが、ちぎれないよう頑丈に出来ているだけに下手に触ってケガしないようにしましましょう。

 

座席です。回転リクライニングシートで、これまた小田急の伝統でセンターアームレストは有りません。ロマンスに仕切りはいらないということでしょう。

 

リクライニングすると座面が微妙に沈み込むチルト機構を採用しています。シートバックやテーブルなど、至るところに木材を使い暖かみを出していますね。座り心地に関しては、底付き感全開なのが何だかな、と思うところではあります。足回りに気をとられて座席にまで気が回らなかったのかもしれませんが、乗客から見て座席は料金を要する列車で一番気にするところだと思うのですが…。

 

デザイナー側から「いやいやちゃんと気を回してますよ」と反論を受けそうなのがここ、座席がやや窓側を向いてセットされています。角度にして5°、こうすることにより自然と視線が窓側を向くように仕向けているのでしょう。眺望を良くするため以外にも「ロマンスカー」らしくちょっとしたプライバシー性の向上も考慮していると言えます。

 

ロマンスカーと言えば窓下に設置された折り畳み式テーブルがこれまた伝統アイテムとなっている感があります。VSEについてもこの伝統をしっかりと踏襲しています。

 

展開の図。面積こそ狭くなっていますが、折り畳み状態で窓側に座った人が窮屈な思いをしないようにするため、向かい合わせ時での利用を考えたためなんでしょう。

 

デッキ仕切り際の座席には網ポケットと個別に分かれた折り畳み式テーブルが備わります。足元のカーペットが少し盛り上がっており、ちょっとしたフットレストのように使えるようになっています。

 

お次はバリアフリー対応区画です。奥は車内販売の準備区画となっているため、ショートショートな空間となっています。

 

座席は肘掛けが跳ね上げ可能で、車椅子固定用のベルトが付いたものです。ここは肘掛けの表地がレザー調となっていますが、フレーム自体が灰皿設置を想定していたのか金属部分が多くなっているのが残念ですね。

 

続いては3号車にあるセミコンパートメント、「サルーン」です。ここはパンタグラフが載っている関係でボールト天井が作れなかったため、肩部分に天窓を仕込んでいます。画像でもチラッと見切れて見えますね(苦笑)

 

座席です。うん、見てからに「グループでワイワイやってりゃ箱根はすぐそこ!」というデザイナーの意図が透けて見えるお手抜きさです。背ズリは直角に近い角度設定、肘掛も無くて腕のやり場に困るこの環境は黙って乗ってりゃ「なんじゃこりゃ」と思うことでしょう。

 

荷棚は二段式、上段にはやや大きい荷物を置くことが出来ます。

 

テーブルは折り畳み可能ですが、上にパンフがどっさり置かれていますね・・。どこかにマガジンラックがあればいいのですが。

 

さてさて、この系列最大のウリと言えば展望席です。前展望ともなれば10時打ちは必須、最前列に至ってはキャンセル待ち以外にどうすれば取れるのか分からないくらいに瞬殺される程の人気っぷりです。

 

とある列車で一番乗車を果たして先頭へ向かうと、乗務員室へと通じる階段の収納中でした。朝の折り返し清掃が無い列車だと、運転士さんが運転席の説明や、昇降の実演を行ってくれます。早起きは三文の得ってところですね(^^)  その後、運転士さんはそのまま乗務員室へと消えていきました、忍者か(笑)

 

展望席と一般席との間には非常用の扉があります。乗車位置に「1、2号車」と書いてあり「?」と思ったら…なるほど…。

 

天井です。LEDのラインを描いたライトが2列入っており、最前面にはスポットライトが配置されています。

 

窓です。展望席だけあり側窓はかなりの大型サイズですが、それを支える柱が太く3列目の席はかわいそうなことになっていますね…。展望席としては完全にハズレ。

 

座席です。一般席と形状は変わりませんが、荷棚が無いためかシートピッチが広げられています。また窓側の折り畳み式テーブルもデフォルト状態で使用することが出来ます。

 

最前列は引き出し式のテーブルの他に木製ボードを貼り付けてキャパが段違いに広くなっています。

 

そして前面窓。思ったより大きくないなぁ、とは率直な感想ですが、LSEにあった中央の柱が無くなり視界はクリアになりました。

 

というわけで最前列。



ロマンスカーあるあるとも言えるのですが、停車駅が多いタイプの最前列席は必ずしも全区間埋まっているわけではないということ。この時も5列目が指定した席でしたが、新宿発車時点では空席だったので少しお邪魔して撮影。この複々線を快走する様、最前列では中々圧巻でした。なおこちらは今回の乗車に巻き込んだ方の撮影故。

 

そしてロマンスカーの真髄を見た気がするのは車内販売。昔はシートサービスと称してアテンダントさんが注文を取りに来て持ってくるスタイルだったものが一般的なワゴン販売に変わりましたが、お茶を頼むと蓋付きのカップに入れられ、ややお高いものの味もそれ相応のものとなっておりました。しかもロマンスカーのコースター付き、記念に持って帰れるのがいいですね。なお、コーヒーを頼むとお茶菓子が付いてきます。

 

…まぁそりゃあ獲ってますよねブルーリボン賞。ブルーリボンの由来は、イギリスのお召し列車で機関車に巻かれる青いリボンが由来なんだとか。

 

箱根湯本にて。